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始まりはセキュリティ対策の強化――“時間当たりの価値を最大化する意識改革を推進”


関連企業を含めると30万人を超える巨大企業の日立グループ。その中核となる日立製作所のワーキング革命は、約12年前からスタートしている。きっかけはPCの解放とセキュリティ対策の強化にあった。シンクライアントによるシステムの開発と導入から、現在までの取り組みについて、2回にわたって紹介していく。

ワーキング革命 - 第5回

始まりはセキュリティ対策の強化

“時間当たりの価値を最大化する意識改革を推進”

文/田中亘


この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売/価格480円)からの転載です。

公式サイトはこちら→ PC-Webzine

紙とPCに縛られた働き方からの脱却

 日立製作所がワーキング革命に取り組んだきっかけは、紙とPCに縛られた働き方からの脱却にあった。その経緯について、同社 ICT事業統括本部 ITプロダクツ統括本部 販売推進本部 ソリューションビジネス統括部 部長の荒井達郎氏が振り返る。

 「15年前の社内は紙の資料で溢れていて、社員はオフィスに戻ってから業務システムにアクセスしなければならず、残業と徹夜の日々でした。そんなPCに縛られた働き方を開放するきっかけが、約12年ほど前のモバイルPC時代の到来だったのです。PCを外に持ち歩けるようになり、モバイル通信とVPNで社内システムにアクセスするようになりました」

 モバイルPCによるオフィスの机からの解放は、社員の機動性や仕事の効率をアップした。しかし、新たな課題にも直面する。モバイルPCの盗難や紛失というリスクだ。ITリテラシーの高い少数精鋭によって構成された会社であれば、各自の注意力によってモバイルPCの盗難や紛失のリスクを最小限に留めることが可能かもしれない。しかし、日立製作所という巨大組織では、個人の裁量に任せる運用はできなかった。そこで「社員を信用しないシステム」の構築が求められたという。

シンクラで働き過ぎる社員が増えた

 「トップダウンでシンクライアントの開発と導入に取り組み始めたのは、2002年になります。2004年にはCitrix XenDesktopを利用した仮想デスクトップ環境を構築しました。しかし、導入の初期段階では、自社で独自にサーバー集約型のPCを開発し、リモートアクセスによる利用も検証していました」(荒井氏)

 端末を持ち歩いても、社員が安全にITを利用できる仕組みを構築するために、日立製作所ではシンクライアントに注目した。2002年当時は、まだ外資系のシステムベンダーも日本で本格的に展開していなかったので、荒井氏の開発チームでは、PCの機能そのものをデータセンターに設置したブレードサーバーに構築し、そのサーバー内のPCにリモート端末でアクセスする、という技術を採用した。やがて、Citrixの製品が日本でも正式に利用できるようになり、2004年からグループ約10万人による運用がスタートした。

 「セキュリティ対策のためにデスクトップの仮想化を推進してきたことが、結果として働く場所に縛られないワークスタイル変革につながりました。日立グループの場合は、IT基盤が成功したことによって、会社の制度も少しずつ充実していったのです」(荒井氏)

 巨大企業ともなると、事前に制度をしっかりと決めてから、IT基盤の構築と運用に取り組むものかと思われがちだ。しかし、日立グループほど巨大になると、制度よりも先にシステムを構築してしまった方が、後から制度で実効性をフォローしていくようになるのだという。結果として、休暇やキャリア開発、働き方においては、表のような制度が整備された。

 シンクライアントによって、場所に縛られない働き方を実現した約10万人の社員には、多くのメリットがもたらされた。顧客訪問時間の増加、さまざまな業務処理のスピードアップ、在宅勤務の実現、自然災害時の事業継続性の確保などだ。

 ただしデメリットもあった。働き過ぎる社員が増えてしまったというのだ。例えば、移動時間や帰宅後に働くようになり、24時間モーレツに働く仕事人が発生した。時間を気にしないで、メールによる大量の依頼が上司から送られてきたり、会議の頻度が増えて見えない「空転」時間が増大したという。

フレキシブルワークの理想とは

 いつでも・どこでも働ける、という便利さは、24時間を仕事時間にしてしまう危険性もはらんでいる。そこで日立グループでは、長時間労働を解消するために「時間当たりの価値を最大化する意識改革」を推進することにした。それが、日立の提唱するフレキシブルワークになる。

 グループ企業で約30万人、シンクライアントを利用している社員だけでも約10万人という日立グループには、他社には真似のできない大きなアドバンテージがある。それはまさに「数の力」だ。2014年度から「質の違うワークスタイル」を目指して、フレキシブルワークを定義するために、同グループでは社内へのアンケートや検証を行っている。

 昔から、外資系ITベンダーのソリューションが、日本企業に採用されて鍛えられ洗練された、という事例は数多くある。その理由の多くが、本気になって採用した日本の大手企業の底力にある。日立製作所も利用者であると同時に、SIerとしての事業を展開しているので、自社のフレキシブルワークもソリューションとして販売している。このフレキシブルワークについては、後編で詳しく触れる。

(PC-Webzine2016年8月号掲載記事)

筆者プロフィール:田中亘

東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系まで、広範囲に執筆。代表著書:『できる Windows 95』『できる Word』全シリーズ、『できる Word&Excel 2010』など。

この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売/価格480円)からの転載です。

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