法改正などの影響で、販売管理システム見直しの機運が上昇

 2022年の改正電子帳簿保存法の施行や、2023年10月に予定されているインボイス制度導入を受け、従来の業務システムを見直し、リプレースを検討する企業が増加している。特に販売管理システムは、他のシステムとの連携も重要であり、インボイスで大きく変わる請求書も取り扱わなくてはならないため、従来のシステムのままでは法対応が難しくなる。

 今の時代、選定候補として最初に上がってくるのはセキュリティ面やBCP(事業継続計画)にも強みを発揮し、コストを抑制できるクラウドアプリケーションだが、多くの企業で広く使えるような設計になっているため、自社専用に開発したシステムとは異なり、細かな部分での差異が導入の障害になるケースは少なくない。

 特に他社とやり取りする帳票類で、システムが提供するフォーマットに合わせなくてはならないケースでは、業界慣習的な記述ができなかったり、慣れ親しんだ業務のスタイル変更を余儀なくされることもある。現場から不満が出たり、導入当初は入力ミスが多発したりすることも少なくない。

 株式会社たけびしが2022年4月から提供を開始したTECSAS Cloudはこうしたクラウドシステムによくみられる課題を解決できる、柔軟なカスタマイズ対応を提供するクラウドベースの販売管理システムだ。

クラウドでも導入支援は必要

 TECSAS Cloudがカバーする業務は幅広く、販売業務、売掛業務、在庫情報、購買業務、買掛業務に加え、マスタ管理や統計情報も取り扱え、経営判断に役立つ資料の作成にも有効だ。それぞれの業務で必要な機能を網羅的に用意しており、たとえば販売管理なら見積もり、受注、出荷予定、売上といった一連の流れをカバーしている。基本となる帳票類は多岐に渡り、それぞれテンプレートが準備されている。

TECSAS Cloudの幅広い機能(抜粋)

TECSAS Cloudの幅広い機能(抜粋)

 基本の画面構成はシンプルで入力などに迷うことはないが、TECSAS Cloudの最大の特徴は、ここからカスタマイズが可能な点だ。例えば、請求書のレイアウトをもともと使い慣れている形式にしたり、データの入力チェックを強化して誤入力を防ぐなどのカスタマイズにも対応してくれる。

 TECSAS Cloudはブラウザーからの操作が可能で、最新のEdge、Chrome、Safariに対応、Windows PCだけでなく、iPhoneやiPad、Androidからも入力、操作できる。このため、モバイルで社外から売上月報等のチェックも可能だ。

入力画面はシンプルで直観的に理解しやすい(受注入力画面)

入力画面はシンプルで直観的に理解しやすい(受注入力画面)

 クラウドシステムなので、オンプレミスと比較するとサーバー設置やインストールが必要なく、低コスト、短期間での導入が可能だ。初期費用は70万円から、月額利用料が4.5万円からとなっている。導入前にはシステムの説明に始まり、現状の業務内容のヒヤリング、分析を実施。導入時には商慣習に合わせたカスタマイズが可能で、最短納期は2ヶ月程度となっている。

 クラウドベースのアプリケーションの中には、オンラインで申し込めばさらに短いリードタイムで利用できるものもあるが、そうした場合はカスタマイズに対応していない。しかし、「クラウドでも、それぞれの業種の業務慣習に合わせるためには、導入支援のサービスは必要だ」と、たけびし情報通信システム部部長の狩野悦伯氏はカスタマイズの重要性を語る。

情報通信システム部部長 狩野悦伯氏

情報通信システム部部長 狩野悦伯氏

40年以上のシステム開発ノウハウを基にカスタマイズを実施

 たけびしは、なぜカスタマイズに注力するのだろうか? 同社は40年以上のシステム開発の歴史を持ち、当初オフコン販売のためにセットで提供する業務アプリの作成からスタートしたが、その後サーバークライアントシステムのパッケージ開発・販売を開始。オンプレミスパッケージ「TECSAS販売管理システム」は、小売を中心に、さまざまな業種に向けてカスタマイズして販売してきた。

「オンプレミスのシステムでも、ほとんどのお客様がカスタマイズを要望されました。20近い業種に向けて、それぞれの業務に合わせたカスタマイズを実施してきました。カスタマイズはお客様の要望次第で、画面の一部変更のような数日で済むようなものから、新しい機能を開発するような数ヶ月かかるものまでありました」(狩野氏)

 システムの説明と顧客のヒヤリングから始めて業務分析を行い、課題を解決するカスタマイズを施すことで、スムーズな導入と、有効な活用が実現できる。それは、クラウド版でも変わらないという。オンプレミス版では、給食弁当システムや市場仲卸システム、機械器具卸システムなど多様な業界に向けた実績があり、蓄積したノウハウを今回の開発に活かし、TECSAS Cloudはわずか1年の設計・開発期間でリリースされた。

顧客の要望対応で成長するTECSAS Cloud

 業務システムは、企業の日々の業務と深く結びついているため、新しいシステムやサービスと入れ替えるのはなかなかハードルが高いが、その分入れ替えが進まず、法制の改正などに対応できずに慌ててリプレースのサービス選定にあたるケースも少なくない。

「実際、まだオフコンのシステムを利用されている会社もあり、そうしたお客様もターゲットユーザーです。販売管理に関しては基本的な機能を押さえていますが、工場の工程管理などが必要なお客様には、別のパッケージをお薦めすることもあります」(狩野氏)

 TECSAS Cloudを推奨するユーザーは売上50億円未満の中堅中小で、情シス部門を持たず専任者がいるかどうかという規模感だ。システムの専門家がいなくても従業員皆が利用できる手軽さを提供している。

 4月に提供を開始したばかりの商品だが、販売開始に先立って、オンプレミス版の既存ユーザーなどにテスト利用してもらったところ、サポート面でもクラウドのアドバンテージが見えてきたという。

「オンプレミス版では、SEがお客様を訪ねてデモ環境を用意していましたが、クラウドではオンラインの申し込みで1ヶ月の試用環境を提供しており、そこで質問やカスタマイズのリクエストなどもやり取りできるため、意見の行き違いなどが減少しました」と、情報通信システム部SE課課長の山口潤氏はメリットを説明する。

情報通信システム部SE課課長 山口潤氏

情報通信システム部SE課課長 山口潤氏

「事前営業で、すでに10件近い引き合いがあります。販売管理システムとして必要な機能は押さえていますが、まだ提供を開始したばかりで、今後基盤をお客様の要望に合わせて成長させていきます」と、狩野氏は語る。

 今後は顧客の要望にもっと寄り添えるよう、販売や在庫、フロントの部分などのシステムを切り分けての提供や、APIによるKintoneなど他社のシステムとの連携の開発も進めていく予定だという。

著者プロフィール

狐塚 淳(こづか じゅん)

スマートワーク総研編集長。コンピュータ系出版社の雑誌・書籍編集長を経て、フリーランスに。インプレス等の雑誌記事を執筆しながら、キャリア系の週刊メールマガジン編集、外資ベンダーのプレスリリース作成、ホワイトペーパーやオウンドメディアなど幅広くICT系のコンテンツ作成に携わる。現在の中心テーマは、スマートワーク、生成系AI、ロボティクス、IoT、クラウド、データセンターなど。