コンテクスチュアル広告の有用性

日常生活においてインターネットの活用が不可欠な時代、ユーザーの多くは、毎日、何らかのWebサイトを閲覧して、次々に表示される広告を目にしています。表示された広告に興味がなければ、当然ユーザーはスルーします。コンテクスチュアル広告は、Webサイト内の文脈やキーワード、画像、動画などをAI(人工知能)が自動解析し、ページに関連性のある広告を表示するため親和性があり、クリック率が高くなります。

例えば、旅行記のページを読んでいるユーザーは、旅行に行きたいと考えている可能性が高いので、旅行用品の広告を表示させます。同じ理由で、コスメのレポート記事には新作リップの広告を表示させると効果的でしょう。コンテクスチュアル広告は、ユーザーの情報や過去の閲覧習慣ではなく、ページのコンテキストを元にターゲティングすることで、広告効果を向上させます。

現在、コンテクスチュアル広告はWebサイトにとどまらず、動画サイトにも広まりつつあります。動画で流れるセリフや物体を検知し、その内容に沿った動画広告を配信するというものです。

サードパーティCookieとプライバシー

コンテクスチュアル広告の最も大きな特徴は、サードパーティCookieを使っていないことです。

従来の「リターゲティング広告」は、サードパーティCookieを活用してユーザーが過去に閲覧したWebサイトのアクセスデータを収集し、そのユーザーの興味や嗜好にあった広告を表示します。つまり、ユーザーは知らない間にWeb上での行動を追跡され、詳細な個人データを勝手に蓄積されているのです。

Cookieは、Webサイトを訪問した際にスマホやパソコンに保存される小さなファイルのことです。このファイルには、ユーザーがWebサイト内で入力したユーザー名やパスワード、メールアドレスなどが保存されます。次に同じWebサイトを訪問すると、Cookieによって前回のログイン状態が維持されています。

Cookieの目的はユーザーの識別であり、それ自体は有害なものではありません。しかし、Cookieは前述のようにユーザーの行動を追跡してデータ収集に利用されることがあります。これをサードパーティCookieといいます。

サードパーティCookieに行動を追跡されていることを知ったら、ユーザーの多くはプライバシーを侵害されたと不快に感じるでしょう。ユーザーだけでなく、消費者の信頼を重視する企業においても、サードパーティCookieのプライバシー侵害は問題視されています。また、Cookieにはセキュリティ上のリスクも懸念されています。悪意のある第三者による、Webサイトへのサイバー攻撃に利用される危険もあるからです。

Cookieレス時代の広告

「Cookieレス」とは、サードパーティCookieを使用しない、受け入れないことを意味します。サードパーティCookieは個人情報保護やセキュリティの観点から問題があるとして、規制が強化され廃止に向かっています。

2022年4月に改正個人情報保護法が施行され、Cookieで収集した個人情報などを第三者に提供し、紐づける際は本人の同意が必要になりました。Cookieの廃止は23年末まで延期され、24年から段階的に実施される予定です。

しかし、現在もほとんどの広告主がサードパーティCookieを利用しています。ユーザーの情報を識別する手段なしで、ログイン状態を維持し、パーソナライズされた体験を提供することは難しいからです。そのため、「脱Cookieが減速するのでは」という憶測もあります。

とはいえ近い将来、Cookieの廃止は現実となるでしょう。そのための備えとして、コンテクスチュアル広告への期待が高まっているのです。

著者プロフィール

青木 逸美(あおき・いづみ)

大学卒業後、新聞社に入社。パソコン雑誌、ネットコンテンツの企画、編集、執筆を手がける。他に小説の解説や評論を執筆。