AI PCがもたらす影響やメリット

 佐近氏はAI PCがもたらすメリットについてこう語ります。「今後、あらゆるアプリケーションにAIが採用されていきます。特にセキュリティの領域において、AIの活用が進むとみられます。その理由として、攻撃者がAIを悪用することで、サイバー攻撃が高度化していることが挙げられます。例えば、今までは違和感のある日本語でフィッシングメールが送られていましたが、AI技術の発達により攻撃者が日本語を理解していなくとも、違和感のない日本語でフィッシングメールを送れるようになっています。AIによって高度化したサイバー攻撃に対し、高度な守りを実現するために、セキュリティソフトにおいてAIの採用が進むとみられています。さらに、Web会議においてAI機能が多数用いられています。背景ぼかしやノイズキャンセリング、視線追跡といったAI機能を活用することで、快適なコラボレーションを実現しています。このようにPCのローカル上でAIを活用する機会が増加していますが、今までのAI処理に特化したプロセッサー『Neural Processing Unit』(NPU)を搭載していないプロセッサーでもAIを利用することは可能です。しかし、NPUを搭載していないプロセッサーでAIを多用するとパフォーマンスが低下し、バッテリの消費も大きくなります。結果として、仕事の作業効率の低下につながってしまいます。そのため、NPUを搭載したAI PCを使用することで、AIの機能を用いつつも、PCのバッテリ消費を抑制できます」

佐近氏の写真

インテル セールス&マーケティンググループ ビジネスクライアント・テクニカル・セールス・スペシャリスト 佐近清志氏

AI PCを支えるインテルの最新プロセッサー

 インテルは2023年12月14日、新しいモバイル向けプロセッサー「インテル Core Ultra プロセッサー」を発表しました。インテル Core Ultra プロセッサーは、CPUとGPU、そしてNPUである「インテル AI ブースト」を単一のパッケージに統合したプロセッサーです。

Core Ultra プロセッサーロゴ

 AI PCを支えるプロセッサーとして、インテル Core Ultra プロセッサーは開発・設計されています。新たにNPUを搭載するだけでなく、CPUとGPU、NPUの全てにAI処理を高速化するアクセラレーション機能を実装しています。プロセッサー全体の処理性能を向上させることで、前世代のインテルのモバイル向けプロセッサー「第13世代インテル Core i7-1365U プロセッサー」と比べ、AI処理性能を最大で2.2倍向上させています。また、搭載されているCPUとGPU、NPUのユニットは、それぞれ得意なAI処理が分かれています。NPUは、テキスト変換や背景ぼかしといった継続的にバックグランドで動作している処理を、GPUは画像の生成といった瞬間的に強力な推論が必要な処理を、CPUは強力な推論が不要な高速レスポンス処理を得意としています。CPUとGPU、NPUをAIの処理に応じて使い分けることで、高いパフォーマンスと低消費電力を両立します。

 インテル Core Ultra プロセッサーは、高性能コア(Pコア)と高効率コア(Eコア)の2種類のコアが稼働するハイブリッド・アーキテクチャーを継続採用していますが、新しい3Dパフォーマンスハイブリッドアーキテクチャにより従来のEコアとは別に低消費電力コア(LP Eコア)を新たに独立させたコンピュートタイルを採用しています。ビデオ再生といった低負荷時は、LP Eコアを駆使し、負荷の増加に伴ってEコア、Pコア、NPUを処理に用いることで、PCのバッテリ駆動時間をより長くできます。
第13世代のインテル Core i7-1365U プロセッサーと比べ、Web会議での電力消費量を最大36%削減しています。

電力消費量比較グラフ

各ビデオ会議ツール使用時の電力消費量比較グラフ

日本HPが展開するAIテクノロジー内蔵PCの新製品

 日本HPは、こうした特長を持つインテル Core Ultra プロセッサーを搭載したAIテクノロジー内蔵ノートPCのポートフォリオを拡充予定です。13.3インチクラムシェル型ノートPC「HP EliteBook 830 G11」、14インチノートPC「HP EliteBook 840 G11」、16インチノートPC「HP EliteBook 860 G11」といったHP EliteBook 800シリーズの新製品をはじめとして、パワフルなビジネス向け14インチノートPC「HP EliteBook 1040 G11」、13.3インチコンバーチブルノートPC「HP Elite x360 830 G11 」を順次発売していきます。

 これらノートPCの特長は二つあります。一つ目は、デバイスの温度管理です。ユーザーの使用状況をAIが学習し、デバイスのノイズや温度、パフォーマンスといった設定を最適化する「HP Smart Sense」を搭載しています。HP Smart SenseがPCを快適に使える範囲で消費電力を抑えることで、デバイスの温度が高温にならないように調整します。さらに、静音性と排気効率に優れた新開発のターボファンを2機搭載しています。

 二つ目はPoly Studio によるオーディオ機能です。高品質の音質を提供するPolyの技術が搭載されており、Poly製品とのBluetooth接続もスムーズに行うことができます。

 こうした特長を備えるPCを業務で用いることで、自宅やカフェなどの外出先でもバッテリを気にすることなく、生産性を向上させることができます。

EliteBook 830 G11の画像

インテル Core Ultra プロセッサーを搭載した13.3インチモバイルノートPC「HP EliteBook 830 G11」

AI PCの導入は従業員の生産性向上につながる

 今後、AI PCの導入を検討しているユーザーに向け、岡氏は次のように話します。「セキュリティやコラボレーションの領域を中心としてAIの活用が進んでおり、来年にはものすごい勢いでAIアプリケーションが登場することが見込まれます。そのため、AIテクノロジー内蔵PC を導入することによって、CopilotといったAIアプリケーションを使う、使わないに関わらず、従業員の生産性向上といったメリットを体感できます。お客さまがこうしたメリットを享受できるように当社では、インテル Core Ultra プロセッサーを搭載したPCをラインアップしていきます」

岡氏の写真

日本HP パーソナルシステムズ事業本部 クライアントビジネス本部 CMIT製品部長 岡 宣明氏