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2017/08/03

働き方改革のキーワード - 第3回

残業代ゼロ法案?――いま知っておきたい「高度プロフェッショナル制度」の中身

「働きたいだけ働く」ための法律!?

巷では「残業代ゼロ法案」と騒がれている「高度プロフェッショナル制度」。多様で柔軟な働き方を謳う働き方改革実行計画にも創設が記載されている制度ですが、これはいったい何を狙ったものなのでしょうか?

文/まつもとあつし


原型は「ホワイトカラー・エグゼンプション」

 新聞では「残業代ゼロ法案」といった見出しも躍る制度案にいま注目が集まっています。研究開発・金融・コンサルタントといった高度な専門知識を必要とする職種において、本人が希望した場合に、労働時間の規制から外すという「高度プロフェッショナル制度」がそれです。

 スマートワーク総研での夏野剛さんへのインタビューでも語られたように、「時間に縛られない働き方」を求める動きは、労使双方にあります。

 しかし、「残業代がなくなるのではないか?」「制度を悪用されたり、その適用範囲が拡大されるのではないか」といった懸念が、この制度の原型とも言えるホワイトカラー・エグゼンプション制度の議論でも指摘されていました。今回の「高度プロフェッショナル制度」は、職種や現状1075万円以上(ただしこれは、年間平均給与額の3倍として厚労省が定める金額ですので、変動します)とされる年収の基準など範囲をより限定する意味合いをその名称に込めて、改めて導入を目指しているものと言えるでしょう。

高度プロフェッショナル制度は、労働政策審議会建議「今後の労働時間法制等の在り方について」(2015年2月)において、フレックスタイム制の見直しや裁量労働制の見直しなどと共に「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設」として取り上げられたのが初出と思われる。

 現在すでに採用している会社も多い「裁量労働制」では、みなし労働時間=実際の労働時間とは関係無く、時間外・深夜・休日の労働時間を一定時間行ったものとみなして、割増賃金を支払う制度です。一方で、高度プロフェッショナル制度では、労働時間と賃金を連動させず、これらの時間の割増賃金も支給されません。このことが「残業代ゼロ」だと言われるゆえんとなっています。

 もちろん、時間に縛られない働き方を選んだからといって、健康を害してしまっては元も子もありません。この制度導入に当たっては、前回取り上げた勤務間インターバルなどの健康維持策の導入も義務づけられる模様です。

 兼業・副業やワークシェアリングも拡がりを見せる中、働く時間が長ければそれだけ収入が増える、といった制度だけでは多様な働き方は実現できません。健康問題に配慮した残業時間そのものの抑制と共に、そもそも時間で管理することをやめようという方向に舵を切ったこの制度は働き方改革のもう1つの軸でもあると言えるでしょう。

今年3月に示された働き方改革実行計画に「意欲と能力ある労働者の自己実現の支援」として高度プロフェッショナル制度の創設が挙げられている。なお、次の国会で審議される予定の労働基準法改正法案にもすでに盛り込まれている。

政治も巻き込んだ論争に

 すでに次の国会で審議される予定の労働基準法の改正案には、この高度プロフェッショナル制度が盛り込まれています。しかしこの制度を巡っては、連合と経団連、政府と野党民進党を巻き込んだ論争になってきました。7月中旬に連合・経団連のトップ会談が行われ、「年間104日以上の休日確保の義務化」などを求め、労働基準法改正案の修正の方針が確認されました。しかしこれが、連合傘下の労働組合や、支持政党である民進党との調整がなかったと批判され、その後撤回する事態となっています。執筆時点では未だ決着はついていません。

日本弁護士連合会は、成立後に適用範囲が一般労働者にまで拡大されかねないとして、高度プロフェッショナル制度に反対の立場をとっている。

 本コラムではこのプロセスの是非については扱いませんが、残業代という割増賃金をあたかも労働者の基本的な権利であるかのように守ろうとするあまり、多様な働き方の導入が遅れてしまっては、結果的に国の活力が削がれてしまうことにもなりかねません。

 実際、筆者はベンチャー・スタートアップ、クリエイティブ産業に分類される会社で働いた経験もありますが、世の中に変革をもたらそうといった理想と情熱を掲げる企業にあっては、現在の「時間」をベースに給料が決まる制度は、働きたいときに働けない、休みたいときに休めない、といった具合に逆にそこで働く人にストレスとなる場面も見てきました。

 ここぞという場面では時間を気にせず思い切り働き、目標が達成された後には思い切り休むという働き方も、1つの選択肢として考慮されるべきだと考えています。

 制度が適正に導入・運用されることこそに論争の主眼が置かれることを望みたいと思います。

筆者プロフィール:まつもとあつし

スマートワーク総研所長。ジャーナリスト・コンテンツプロデューサー。ITベンチャー・出版社・広告代理店・映像会社などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程でデジタルコンテンツビジネスに関する研究も行う。ASCII.jp・ITmedia・ダ・ヴィンチニュースなどに寄稿。著書に『スマートデバイスが生む商機』(インプレス)、『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)、『コンテンツビジネス・デジタルシフト』(NTT出版)など。

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