MINDSレポート【第1回】

ミレニアル世代は働き方改革に何を提言するのか?

異業種連携によるミレニアル世代の働き方改革推進コミュニティ「MINDS」が本格的な活動を開始している。2025年には労働人口の75%を占めるミレニアル世代は、従来型の働き方を超える、どんなワークスタイルを提案してくれるのだろう?

文/狐塚淳


MINDSの登場

 異業種連携によるミレニアル世代の働き方改革推進コミュニティ「Millennial Innovation for the Next Diverse Society(略称:MINDS)」が、2019 年 1 月 1 日に発足した。発足メンバー企業は、味の素、カブドットコム証券、電通デジタル、日本航空、日本マイクロソフト、パナソニック コネクティッドソリューションズ社、JR東日本、三菱自動車工業の8社。MINDSの目的は「製造・金融・運輸・食品・ITなどの異業種の企業に所属するミレニアル世代の社員が集まり、2020 年に向けた理想の働き方を実践し、その学びを自社や社会に還元していく」ことだ。

 政府による働き方改革に向けた法整備が進む中、各企業や団体などの取り組みも進展している。しかし、一方で、これから労働人口の中心を占めていくミレニアル世代はまだ働き方改革を主導する形になっていない。この課題に向けた取り組みがMINDSだ。

 ミレニアル世代という言葉は日本でもポピュラーになってきたが、ミレニアル期である西暦2000年以降に成人した、あるいはする世代で、1980~2000年代初頭に生まれた、かなり幅広い年代を指す。当初、マーケティング対象としてとらえどころのない世代として注目されていたが、現在ではコミュニケーションを重視し、多様な価値観を持つ世代という評価が定着してきた。スマートフォンや SNS を使いこなすデジタルネイティブ世代でもあるし、日本ではいわゆるゆとり世代がミレニアル世代に大きく重なる。

 2025年には世界の労働人口の75%をミレニアル世代が占めるようになるため、これからのワークスタイルは彼らが形作っていくことが期待されている。しかし、働き方改革では、企業のトップが決意を持って取り組むことが重要だという意見が強く、多くの企業では働き方改革のイニシアティブを取っているのは、まだ彼らではない。

 経営層はバブル期の成功体験を社会的共有知として持っている世代だ。経済的な低迷の中で成長してきたミレニアル世代の発言にはそうしたバックグラウンドがない。このため、単一企業の取り組みでは、いかにプロジェクト制を敷こうと、社内の体制等に引きずられる部分があり、ミレニアル世代の意見はなかなか通りにくい状況にある。

 ミレニアル世代が主導し異業種連携で取り組むMINDSには、こうした状況を改善し、新しいワークスタイルに向けた提言が期待される。1月の正式発表以降、世間的にも多くの注目を集め、さまざまなメディアや企業からのディスカッションや協力要請のアプローチがあるという。

MINDSのミッションとビジョン

Microsoft365ビジネス本部製品マーケティング部プロダクトマーケティングマネージャー働き方改革推進担当 山本築氏

 MINDS発足のきっかけは2018年5月。現在、日本マイクロソフトでMINDSリーダーを務める山本築氏とパナソニック社員との間で、ミレニアル世代による企業連携した働き方改革のプロジェクトを立ち上げることができないかと話したのが始まりだった。「企業で若手の立場のミレニアル世代はなかなか発言の機会がない。広げてみようかと話し合ったのが最初です」と、山本氏は振り返る。

 山本氏は日本マイクロソフト入社4年目で、これまでWindows10の発売前販促やセキュア・エンジニアなどの仕事を経験してきたが、これからは働き方改革にミレニアム世代が取り組んでいかなくてはいけないとの思いから、社内公募で1枠だけ募集された働き方改革担当に応募し採用された。現在、社内では日本マイクロソフト独自の別のミレニアルプロジェクトにも参加している。

「正式にMINDSの提案が通ったのが10月で、最初の記者発表の11月までの1か月で参加企業8社の調整を行いました」(山本氏)

 枠組みとしては、各社からはミレニアル世代に属するリーダーが一人参加し初期のディスカッションで方向性を洗い出した後、参加企業ごとに同世代のメンバーを募り、具体的な活動に広げていく。また、各社ではMINDS担当の役員クラスがプレミアムエグゼクティブとして、リーダーと対になる形で設けられ、これにより将来的にMINDSで得られた知見を各社で提案する道筋が創られる。

MINDSの概要

 11月以降、週1回のリーダー会を開催し、8名で方向性となすべきアクションを模索してきた。そのなかで「すべての個人が自分らしく働く社会を実現する」というミッションと、「業界、会社の枠を超えたミレニアル世代から多様性ある働き方を日本に浸透させる」というビジョンが決定された。

MINDS のミッションとビジョン、MINDSロゴ

 1月18日には39名のメンバー参加による第1回キックオフミーティングが開催された。記事冒頭の写真は、このミーティング参加者のものだ。参加者は人事・新規事業・IT・営業など様々な部署に所属するミレニアル世代で、ミレニアル世代が理想とする働き方を 8 グループに分かれてディスカッションし、最後にお互いに共有するワークショップが実施された。

「キックオフミーティングでわかったのは、ミレニアル世代が仕事に求めていることは、『やりがいのある仕事へ』と『自由な働き方の選択へ』という2つの要素に集約できるということです」(山本氏)

キックオフミーティングで整理された5つのテーマ

 キックオフミーティングで出された意見やアイデア・課題などを基に5つのテーマを設定し、分科会を立ち上げた。分科会ごとに、働き方に関する共通の課題認識などをテーマにディスカッション、調査、研究、検証などを行っていく。参画企業の枠を超えて実施していく予定で、現在は参加者も50名近くに増加し、活発なディスカッションが行われている。

 MINDSの参加者同士のコミュニケーションにはグループチャットソフトのTeamsを利用し、各チャネルの議論では企業の壁を越え、リーダーや担当エグゼクティブ、各メンバーが自由な発言を行っている。また、プライベートな連絡にはLINEも利用している。「ネットを通した弱いつながりが、共感を生み出し、行動につながっています」と山本氏は言う。

MINDSが目指す役割

 では、MINDSは具体的にどんな活動をしていくのか? 大まかな流れとしては、最初に、参加企業の働き方の現状を知り、ミレニアル世代からの気づきをまとめることから出発し、そこから実践内容を企画し各企業で実行・検証を行い、その結果を MINDS 参画企業各社に共有し、提案書として政府や経済団体などに提言を行うという段階を踏んでいく予定だ。

MINDSのスケジュール

「MINDSはミレニアル世代の働き方改革だけを目指すコミュニティではありません」と、山本氏は説明する。ワークスタイル変革に取り組むには、ミレニアル世代だけでなく、年上の世代との連携も必要になる。ITツールやクラウドサービスなどの普及で、場所や時間を選ばずに、高い生産性を実現できる労働環境が整備しやすくなってはいるが、長年継続してきた旧来の働き方が、その進展を阻害する要因ともなりうる。

「若手が真剣に働き方について考えるべきだという意見もありますが、そんなことはもちろんきちんと考えています。しかし、これまではその声が通らず、意見はつぶされることが多かった。ただ、上の世代からそういう発言が出てくる背景も推し量らなくてはいけません。すべての働く人がやりがいのある仕事をでき、自由な働き方を選択できるようにすることをMINDSでは考えていきます」

 MINDSは1年間という期間限定のプロジェクトだ。「それぞれが業界代表としてふるまうくらいの気持ちで活動しています。業務として1年間の中で結果を出し、2020年に向けた提言を行っていきます」と、山本氏は語る。2月にはMINDSのFacebookページも立ち上げた。情報発信を継続し、当面、5,000人のフォローを目指すという。

 本連載では、MINDSの今後の実践と検証、参加各企業の働き方改革への取り組みを継続的に追っていく。

 

MINDS参画企業である日本マイクロソフト主宰のミレニアル世代関連セミナーが予定されています。

Microsoft Millennial Workstyle Innovation 2019 これからを生きる君たちへ~ ミレニアル世代が求める職場のIT環境とは~

 日 時: 2019年 6月 7日(金)13:30-17:40 (受付開始 12:30)
 会 場: 六本木アカデミーヒルズ オーディトリアム
 〒106-6149 東京都港区六本木6丁目10番1号 六本木ヒルズ森タワー49F
 主 催: 日本マイクロソフト株式会社
 定 員: 150名
 参加費:無料
 参加登録サイト
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000041519.html

※MINDSへの参加問い合わせや質問は下記の「MINDS 運営事務局」まで。

E-mail:MINDS2019@outlook.com

筆者プロフィール:狐塚淳

 スマートワーク総研編集長。コンピュータ系出版社の雑誌・書籍編集長を経て、フリーランスに。インプレス等の雑誌記事を執筆しながら、キャリア系の週刊メールマガジン編集、外資ベンダーのプレスリリース作成、ホワイトペーパーやオウンドメディアなど幅広くICT系のコンテンツ作成に携わる。現在の中心テーマは、スマートワーク、AI、ロボティクス、IoT、クラウド、データセンターなど。