筆者プロフィール:まつもとあつし
スマートワーク総研所長。ジャーナリスト・コンテンツプロデューサー。ITベンチャー・出版社・広告代理店・映像会社などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程でデジタルコンテンツビジネスに関する研究も行う。ASCII.jp・ITmedia・ダ・ヴィンチニュースなどに寄稿。著書に『スマートデバイスが生む商機』(インプレス)、『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)、『コンテンツビジネス・デジタルシフト』(NTT出版)など。
2016/10/04
IoTとはInternet of Thingsの略称です。しかし、言葉の開きが分かっても、それが何を指すのかイメージしづらい上に、直訳もなんだかよく分からない言葉です。今回はIoTとは何か? そしてこれがもたらすインパクトについて読み解いていきます。
文/まつもとあつし
IoTという言葉が登場したのは、今から15年以上前とされています。FeliCaなど非接触型のICカードなどで採用されているRFID(Radio Frequency Identifier)に関連して、紹介されるようになりました。
ICカードをイメージ頂ければわかるように、そこには極小のチップが埋め込まれており、入出金の履歴などのデータを格納し、外部との無線通信でやりとりできるようになっています。この技術を用いれば、スマホを含めたコンピューターだけでなく、さまざまな「モノ」がインターネットに接続できるようになる。そのことを指してIoTという言葉が生まれたのです。
少し前に、RFIDチップを商品タグなどに埋め込んで、産地や流通経路を記録するといった話題がニュース番組で紹介されていたことを覚えている読者も多いはずです。しかし、いくらチップが安くなったとはいえ、そのコストを商品に上乗せすることは難しく、普及するには至っていません。
当時は、スマートデバイスやクラウドといった環境が整っておらず、いくらチップに有用な情報を記録しても、それをどう取り出して活用すれば良いのか、誰も答えを持ち合わせていなかったということかもしれません。しかし、現在では、“モノがインターネットにつながる”ことによって、これまでにはないメリットを得られるようになっています。
IoTという言葉が広まるきっかけにRFIDタグ。iPhone 7への対応が話題となったFeliCaもRFIDの一種だ。
身近なところでは、心拍センサーなどを備えたスマートウォッチが例として挙げられます。スマートウォッチ自体はまだネットに直接つながるものは少ないのですが、Bluetoothでスマホに接続し、心拍や振動などの情報をスマートフォンに送ることができます。その情報はさらに、クラウドサービスにアップロードされ、私たちは日々の運動量や健康状態を把握し、生活の質の向上に役立てることができるようになったのです。スマートウォッチに搭載された各種センサーという「モノ」が、スマホを通じてインターネットのクラウドサービスに繋がる1つの例と言えるでしょう。
先日ソフトバンクがイギリスの半導体大手ARMを3.3兆円という巨額の費用で買収したことは記憶に新しいところです。ARMが持つ技術は、スマートフォンの分野では9割のシェアを持つとされます。小型で省電力なCPUの設計について多数の特許を持つARMは、IoTのさらなる進展で業績を拡大するだろうと予測しての買収であったといわれています。
「モノのインターネット」と呼ばれると、なんだかイメージがしづらいのですが、とにかく色々なモノ――これまでネットにつながっていなかったようなものが様々な形でネットにつながることによって、私たちの生活や産業、ひいては社会に少しずつ変化をもたらそうとしているのです。
本連載でも取り上げたインダストリー4.0の分野でも、IoT関連の技術は欠かすことができなくなっています。この記事を執筆中の9月26日にGEが東京電力と火力発電の効率化でIoT技術を活用すると発表しました。タービンや発電機の稼働状況をセンサーによって監視し、そのデータをクラウドに蓄積・分析することで、稼働効率を向上しようというものです。先行する米国での事例ではその効率は1〜3%向上したとされています。
蓄積される莫大なデータ(ビッグデータ)を、人工知能によって人の目・手・頭を介さずに逐次解析し、必要なフィードバックを得る。その起点となるのがIoTなのです。
IoTという概念が登場する以前の1990年代初頭には、ユビキタスコンピューティングという言葉が喧伝された時期もありました。コンピューターが至るところに存在し、いつでも使えるという段階から、インターネット、そしてクラウドの普及によって、それはIoTという考え方に進化したということもできるでしょう。
ではIoTは今後、どうなっていくのか? 米シスコシステムズは「IoE」という概念を提唱しています。IoTがモノに焦点が当たっているのに対して、IoEはInternet of Everythingつまり、「全て」がインターネットに接続されている未来を指しているのです。そこではモノとモノがネットを介してつながるだけでなく、ヒトとモノ、あるいはヒトとヒトもネットを介して接続され、相互に作用しあう社会が予測されています。
なんだか攻殻機動隊のようなSFみたいだと思われるかたもいるかもしれません。しかし、VRの普及もまもなくとされるなか、ますますそういった世界は身近で現実味を帯びたものになりつつあります。IoTがもたらす変化は私たちの働き方も静かに、しかし確実に変えていくことになるはずです。
スマートワーク総研所長。ジャーナリスト・コンテンツプロデューサー。ITベンチャー・出版社・広告代理店・映像会社などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程でデジタルコンテンツビジネスに関する研究も行う。ASCII.jp・ITmedia・ダ・ヴィンチニュースなどに寄稿。著書に『スマートデバイスが生む商機』(インプレス)、『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)、『コンテンツビジネス・デジタルシフト』(NTT出版)など。
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