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2019/08/19

あの人のスマートワークが知りたい! - 第21回

パックンが日本人の働き方にもの申す――日本人よ、レールを外れて走り出せ!



改革=レボリューション。革命は上から言われてやるもんじゃない!

ハーバード大学出身のお笑い芸人、パックンとして有名なパトリック・ハーランさん。芸人としてだけでなく、高学歴タレントとして情報番組のコメンテーターやバラエティ番組でも活躍。テレビで観ない日はないくらいの人気者です。日本に住んで25年が経ち、日本文化や政策などにも積極的な情報発信を行っているハーランさんに日本人の働き方について聞きました。

文/豊岡昭彦


パトリック・ハーラン
(Patrick Harlan)
1970年生まれ。アメリカ合衆国コロラド州出身。1993年、ハーバード大学比較宗教学部を卒業後、来日。1997年、吉田眞さんとお笑いコンビ「パックンマックン」を結成。情報番組「ジャスト」(TBS)、「英語でしゃべらナイト」(NHK)など、情報・バラエティ番組への出演多数。2012年からは東京工業大学非常勤講師(「コミュニケーションと国際関係」)を務めている。『ツカむ!話術』(2014年 角川書店)、『大統領の演説』(2016年 角川Oneテーマ21)、『世界と渡り合うためのひとり外交術』(2017年 毎日新聞出版)、『「日本バイアス」を外せ! 世界一幸せな国になるための緊急提案15』(2018年 小学館)など、著書多数。

日本は25年前よりも暮らしやすくなっている!

―― 1993年(平成4年)に、来日されてから25年以上が経過したということですが、この25年で日本の印象は変わりましたか。

ハーラン さまざまな場所で意識が高くなった気がします。名ばかり改革も含めてですが、「改革」という言葉が飛び交うようになりましたよね。たとえば、女性の社会進出を意識するようになり、民族・性的指向・宗教・身体的な特徴など、それぞれの個性をより認めるようになり、マイノリティに対する意識も高くなりました。日本は以前からすごく素敵な社会ですけど、色々な方にとってより暮らしやすくなったと思います。

 僕が日本に来たばかりの頃は、お笑いといえばデブ・ブスネタが非常に多かったです。僕も当時は意識が足りなくて、普通に笑っていました。でも、いまは身体的な特徴をこき下ろすようなネタは好まれないようになってきています。これは良いことだと思うんですよ。

 デブ・ブスネタが実社会に影響を与え、その結果、女性や身体的な特徴を持った方々が暮らしづらい社会になっていることに、僕を含め皆が気づいたことでそういった笑いが減り、より暮らしやすい社会になったと思います。

 また、外国からの移民をもっと受け入れようという話も出ていますが、すでに外国人を見ない日はありませんよね。このあいだもスーパーマーケットでセロリが見つからないので、レジの女性に「すみません、セロリはどこにありますか?」って聞いたら、レジの女性はおそらくインド系の方で、僕の発音が通じなかったらしく、「すみません、店長。お願いします」と言って店長を呼び出したら、その店長は中国人だったんです。つまり、日本のスーパーで、インド人と中国人がタッグを組んでアメリカ人を助けたんです! いい時代だなぁと。日本でも、こういうシーンが珍しくなくなりました。

 ただ、堅苦しくなったところもあります。現在は本当にクレーム社会で、たとえば騒音に対してうるさい人が多くて、子どもが近所で遊べなくなったとか、保育園が建てられなくなったとか、そういう暮らしづらい面が増えたというのも事実なんですよね。暮らしやすくなった面もあれば、暮らしづらくなった面もあるし、不思議なんですよ。

―― どうしてそうなったと思いますか。

ハーラン たぶんね、統計学的に言うと、おじいちゃん、おばあちゃんの割合が増えたから。子育てが終わっているから、自分の子どもはうるさくない。自分の子どもがうるさかった頃は、たぶん子どもの声に寛大だったけど、自分の子どもが大人になったら、「子どものキャーキャー言っている声はもう聞いていられない」となったのかなと思うんです。加えて若い世代にも子どものいない家庭が増えたから、子どもに寛容な人が減ってしまった……。

 でも日本はすごく良い国だということも忘れないでほしいです。相変わらず倫理観が高いです。さまざまなスキャンダルが日本のテレビで報道されていますが、アメリカならローカルニュースにもならない程度のものですよ。

 アメリカで起こっている問題は、住むのが怖くなってしまうぐらいひどいものが多い。たとえば僕の出身地はいま40万人くらいの地方都市なんですけど、そんな地方都市で10日に1件ペースで殺人事件が起こっているんです。怖くてテレビのニュースは見たくない。あるいは、いま日本では児童虐待が話題になっているじゃないですか。調べてみると日本では、年間50人ぐらいの子どもが、親のおろそかなケアや虐待によって死亡しています。50人は本当にひどい数字だと思うんですけど、アメリカではどれくらい死んでいると思いますか?

 正解は約2000人です。人口は日本の3倍ですが、児童虐待で死ぬ子どもの数は日本の40倍です。だから、世界から見たら、日本は相変わらずすごく良い国ですよ。

先進国でも16年間で出生率を1.66から2.0に上げた国がある

―― ハーランさんは昨年11月に『「日本バイアス」を外せ! 世界一幸せな国になるための緊急提案15』(小学館刊)という本を上梓されましたが、この中で伝えたかったことは。

ハーラン いま話したようなことも含まれますけど、日本に25年暮らしてきて、変わらない日本の良さをベースにしながら、日本の変わったところも伝えて、さらに改善できる点を生意気な僕が偉そうに言わせてもらいました! 25年も暮らしているし、家も持っているし、子どもも日本人だし、たぶん日本に骨をうずめると思います。だから日本の将来を深く心配しているというか、期待しているというか……。みんなの力を借りて、日本をより良い国にしていきたいなと思っているんです。

 「バイアス」という単語を使ったのは、日本の皆さんは、「これまでこうであったように、これからもこうでなきゃいけない」という、敷かれたレールの上を走りがちな考えの方が多いと思うんです。でも、「本当はレールはないぞ。みんな四駆の持ち主であって、好きなところへ走れるよ」と。ちょっと視野を広げて、議論の幅も広げたいなと思っているんです。だから、参考になりそうな、世界の事例も取り上げています。

 単純に興味ある分野もあって、最近だと少子化問題にとても興味を持っています。幼児教育無償化という政策について、子どもが暮らしやすい環境を整えるのは大賛成。でも世界にはもっと大胆な例があるんです。ハンガリーはこの間、お母さんが子どもを3人以上産んだら生涯所得税をゼロにするっていう法律を作ったんです。生涯ですよ、生涯ずっと。

 僕は子どもが2人いるんですけど、あと1人増やすのは、ほんのちょっとのモチベーションがあればそんなにハードルは高くない。だから所得税がゼロになるなら、絶対に3人目を作ると思うんですよ。それで、税金控除を受けられるから「控除ちゃん」っていう名前を付ける!

 また、フランスでは子どものいる家庭の所得税を減税するし、2人以上の子どものいる家庭には家族手当を支給して、しかも子どもの人数が増えれば増えるほど手当の額がどんどん上がるんです。年金も優遇されたり、出産費用や検査費用も無料で、育児休暇も3年間取れるんです。1994年に出生率1.66まで下がったフランスは、この政策で2010年に2.0まで回復させました。だから、フランスのような先進国でも政策次第では出生率を上げることはできるんです。日本だってできるはずなんですよ。

政府に頼らず自分たちで働き方を変えよう!

―― ハーランさんのおっしゃる「日本バイアス」、敷かれたレールの上をずっと走ってきた日本のやり方の一つが「働き方」だと思うのですが、日本人の働き方については、どう思いますか。

ハーラン まずトップダウンを待つ日本の国民性が気になりますね。待機児童問題も政府が動かないと解消されないという考え方。政府が動くのを待つというのも問題だと思うんですよ。「働き方改革」もそうです。

 改革というのは、革命、つまり「レボリューション」ですよ。革命は上から言われてやるもんじゃない! 庶民が立ち上がって政権を打倒する、庶民が国の制度を自らの手で変革させる、それが革命であって改革なはずですよ。

 一方で、政府の働き方改革関連法も生ぬるいとは思います。結局は隠れ残業が出たり、名ばかりの高プロ(高度プロフェッショナル)とかも出てきたりするはずで、いろんな問題を抱えていると思うんです。政府も頑張っているのは認めますよ。僕は資本主義の国から来ているのに、規制反対の自由主義ではないんです。僕は規制も大事で、規制がちゃんと役割を果たさないと、資本主義は狂ってしまうという考え方をするタイプなんです。ですから日本政府の案にはまずは賛成したい。それでもっと議論を重ねて、もっと良いものにするべきだと思うんです。

 さっきから国民性、国民性と言っていて、「日本の国民性だから」と片付けるのも良くないかもしれないですけど、それを変えるには教育も変えないとダメだと思います。教育は大事な課題です。日本の良さ、たとえばマナーの良さ、気配り、気遣い、倫理の高さを守りたいです。底上げ教育も。でも、中流階級を支える均一さも保ちつつ、底上げしながら天井を下げないことが必要です。抜きん出る存在をもっと延ばす、すごくぶっ飛んだ人をもっと飛ばさせるという自由さを増さないと。これは深い文化的なところに基づいているので、25年間見ていても変わらなかったし、これからの10年、20年でも変わらないかもしれないですけど、変わってほしいところ、頑張ってほしいところです。

 たとえば、日本の小学校の「前へならえ」。背の順で並べるとか、あいうえお順で並べるとか、明白な順番のルールがある。秩序を保つための精神づくりと言うか、“しつけ”になっていると思うんですね。日本ではこういう管理しやすくするための“しつけ”がすごくうまくできている。日本では、何でもだいたいじゃんけんで解決できて、けんかが起こらない。そういうマナーの良さ、倫理の良さ、社会的な秩序の礎となっている文化は大事ではあるんですけど、それではグローバルな世界では勝ち残れないかもしれない。

 アメリカには、「前へならえ」はありません。背の順ではあまり並ばない。どうするのかと言うと、先生が「はい、みんなおいで。列に並んで」と言ったら、交渉が始まるんです。「なんでお前、いつも先頭にいるの。俺がたまに、先頭に立ってもいいんじゃないか」と。「なんでだよ、お前、なんでお前が先頭に立つ資格があるんだ」「俺、だって成績が一番いいじゃん」「そんなの関係ねえよ、列に並ぶのは成績の問題じゃない、体力だ」と言い合いの末、喧嘩になることも。でも、アメリカには発言の自由があります。明白な基準がないからこそ、交渉やアイデア、自己主張といったことができるようになるんです。管理されていない部分があるから、起業家が出てくるんです。

 僕は、日本はアウトローがすごく得をする社会だなと思うんですよ。

 アメリカはアウトローがヒーローとなって、ある意味では得をするんですけど、アメリカはアウトローに慣れている社会でもあるんですよ。日本はアウトローに慣れてないからアウトローをのさばらせてしまう。たとえば、なんで日本でオレオレ詐欺がこんなに増えるのかと言うと、日本では性善説で人が動いているからだと思うんです。アメリカでも詐欺は多いですよ。でもアメリカの詐欺師はバカを相手にしているんです。日本人で騙される人はバカではありません。日本人は、性善説で簡単に相手を信じる人が多いと思うんですよ。だからオレオレ詐欺が増えてしまう。でも一方で、性善説で動いている日本はすごく素敵なので、性善説は捨ててほしくないんですけど。

 つまり、日本で型破りが出ればすごくチャンスが多いと思うんです。たとえば、平成時代に大躍進したユニクロやソフトバンクは型破りだと思うんですね。平成時代を代表する大企業は、新しいビジネススタイルを生み出したから成功しているんです。

 敷かれたレールから外れる企業が成功するんです。レールを真っすぐ走っているはずなのに、直角に右に曲がったり左に曲がったりした企業が成功していると思うんですね。世界に飛び立った日本人のクリエイターやアスリートたちもそんな気がするよね。レールを分解するのも大事かもしれないですよ。

日本でも「おにぎり20個ルール」を

―― 製造業はまだいいんですけれども、日本はホワイトカラーの生産性が低いと、ずっと言われているんですが、それもみんなでレールの上を走っているからでしょうか。

ハーラン そうだと思います。いまだに課長が帰らないと部下が帰れないみたいな雰囲気があると思いますし、いまだに会議が長いし、会議に参加する人数も多すぎます。アマゾン(Amazon.com)の創業者のジェフ・ベゾス氏の「2ピザルール」って知ってますか。アマゾンは操業してまだ25年くらいですが(1994年創業)、その急成長には「2ピザルール」も関係しているんです。

 ピザの枚数は会議の大きさを示しています。つまり、チーム会議のときに「ピザ2つ」って注文して済むぐらいの人数しか会議に出席してはいけないというルールです。アメリカ人はけっこう食べるから15人では多い! ピザ2枚だと6、7人ぐらいかも。小規模にすることによってフットワークを軽くすることができるんです。

 この6、7人のユニットで、新しい事業に挑戦する。このユニットに全部任せる。そして、アマゾン本社の会議に、その人たちは参加しない。新事業チームが本社の事業会議に参加すると会議の人数が増えて、会議が長くなって、専門知識の平均値が下がっていく。そして、効率が悪くなる。本来のビジネスも遅くなる。新しい事業も進展が遅い。クリエイティブなことができない。スタートアップ企業みたいなフットワークの軽さもなくなる。

 こういうの、日本でも簡単にできると思うんですよ。「2ピザルール」だとわかりづらいから、「おにぎり20個ルール」みたいな! 徹夜で会議をしてもおにぎり20個で済むように。日本でもすぐにできます。なのに、やらない。それは「脱線してはいけない」という教育を受けてきた社員が多いから、しょうがないと思うんですよ。

 たとえば、小中学校でダンスの授業を増やしたじゃないですか。その理由は、表現力をつけるため。先生たちは「経験がないから指導できない」とか言いながら、いまも続いているらしいんだけど。ダンスの授業では、生徒がみんなで振り付けを考えるんですけど、最後みんなで一緒に同じ踊りをするんです。それはミュージカルとかのコーラスラインがやるようなやつで、自己表現のダンスじゃない。教わった通りに踊ろうぜというのは、ダンスじゃなくて陸軍の行進と一緒じゃないですか。

 みんなで一緒に踊るのも素敵なスキルですけど、本当に自己表現ができるようになったとは思わない。自己表現を育てる、発想の自由を育むような教育も大事なんです。

「みんな早く帰れ、あとでLINEするから」は働き方改革じゃない

―― ITでご自身の働き方は楽になったと思いますか。

ハーラン 連絡経路がすごく早くなったし、スケジュールの共有もスムーズに、調べ物とその結果を保存する時間も早くなりました。LINEでグループを作ってチームで共有するのも、一対一の連絡じゃなくてみんなに一気に連絡できるから、すごく楽になりました。

 たとえば、テレビ東京の『モーニングサテライト』、BS-TBSの『報道1930』、フジテレビの『報道プライムサンデー』など、番組ごとにLINEグループを作って、プロデューサー、ディレクター、マネージャーを登録しています。こうすることで、自分の好きな時間に台本やコンセプトのやり取り、フリップや資料の確認ができるんです。僕が調べて書いたものをすぐに共有してフィードバックしてもらえて、それを何度か訂正して……と、一日に何往復もできるようになりました。スマホのおかげですよね。

 ただし、スマホのせいで仕事から逃げられなくなったのも事実なので、自ら制限しなきゃいけないと思うんですよ。「休みの日は休みです。ごめん、LINEも見ません。緊急の場合は電話をください」って、マネージャーさんにも言ったりすることもありますし、マネージャーさんも同じように自分の時間を大事にしているから、お互いにそれを許し合って、その価値観を共有しているんです。

 だから会社で働いている人も、営業時間が9時5時だったら、「9時5時の間は、好きなだけLINEをください、そのほかは私は見ない可能性があります」というスタンスを取れるように、それを応援する課長、部長、社長がいないとダメだと思うんですよ。

 今回の働き方改革で、「みんな早く帰れ、あとでLINEするから」になったら元も子もないじゃないですか。ですから、それも本当に徹底して、新入社員の面接で自慢できるようにならないとダメだと思うんですよ。

 最後にもう一度言います。上からの働き方改革を待つのはダメですよ!

筆者プロフィール:豊岡昭彦

フリーランスのエディター&ライター。大学卒業後、文具メーカーで商品開発を担当。その後、出版社勤務を経て、フリーランスに。ITやデジタル関係の記事のほか、ビジネス系の雑誌などで企業取材、インタビュー取材などを行っている。

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