池澤あやかの 体験!スマートワークテクノロジー - 第2回

高精細で超リアルな3DCGとVRに驚きの連続。デジタルコンテンツ制作会社キャドセンターを支えるデルのソリューション



デル「Dell Precisionワークステーションシリーズ」

池澤あやかさんが、さまざまな観点で働き方を変革していくソリューションを体験するレポートの第2回は、CGやVR、シミュレータといったデジタルコンテンツを制作する株式会社キャドセンターにご訪問。さまざまなコンテンツを実際に体験し、制作を裏で支えるデルの「Dell Precisionワークステーションシリーズ」についてお話を伺いました。

取材/池澤あやか、文/飯島範久、写真/岡田清孝


タレント/エンジニア
池澤あやか
@ikeay
第6回東宝「シンデレラ」オーディションで審査員特別賞に選ばれ、タレントとして活躍する一方、慶應義塾大学 環境情報学部(SFC)在学中にプログラミングに目覚め、Ruby界では女神と呼ばれるほどに。大学卒業後もプログラミングができるタレントという特技を活かして活動中。現在TOKYO MX「VRフレンズ2」(毎週金曜日20:00~20:30)に出演中。

キャドセンター清水社長が語るCG、VR制作の世界

池澤あやか「3DCGやVRの制作を手がけてどのくらいになるのですか?」

清水宏一「キャドセンターは創立して30年になります」

池澤「30年! それは長いですね」

清水「VR(バーチャルリアリティ)に関しては、どこからをVRと呼ぶかにもよりますが20年ぐらい前から開発しています。当社はシミュレータも手掛けていますが、シミュレータもVRの1つと言えますからね」

池澤「確かにそうですね。私も学生時代にVRをやっていました。国際学生対抗VRコンテストというイベントがあって、それに作品を出したりしていました。私がやっていたのは、目を支配する系のVRではなく、触覚とかでしたが」

清水「VRの起源は1960年代から、などと諸説ありますが、ヘッドマウントディスプレイが登場して初めてVRができたわけではありませんからね。3DCGで空間を構成してインタラクティブな操作ができるものの総称をVRと呼んでいたくらいなので、当社に限らず古くからVRをやっている企業さんは、いまごろVRと騒がれても、とおっしゃっているぐらいです」

池澤「このあいだ久しぶりに、そのコンテストへ行ったら、ヘッドマウントディスプレイ系ばかりで、うわ~って思いました。面白いコンテンツもあったんですが、半分ぐらいそっちになっていて。個人的には、もうちょっと触覚など視覚以外も進化してほしいですね」

清水「ここ3年のあいだで、VRの潮流はヘッドマウントディスプレイを装着し、視界が360度覆われた状態で体験するものが主流になりましたが、一般化したあとは、触覚デバイスとの組み合わせもそうですし、体験の役割や質、投資効果などが厳しく求められるようになると思います」

株式会社キャドセンター代表取締役社長 清水宏一氏。

池澤「昔は、こんな映像が作れるマシンを買うのだけでもメチャメチャ大変でしたよね」

清水「30年前にBtoBビジネスとしてCGを作ることは、対応するメーカーさんやベンダーさんが少ない中、ワークステーションを起動するだけでもひと仕事でしたし、1枚の絵をレンダリングするための労力と時間も大変なものでした。初期投資もハードルが高かったでしょうし、相応の経営判断が必要だったと思います。また、そのぶん希少性もあったし、提供するものの価値も高かった。この30年でワークステーションは高性能になり、価格もリーズナブルになりました。それに付随するデバイスにも表現方法にも多様性があって選択肢と可能性が増えた反面、我々も常に競争にさらされる状況になり、恩恵と緊張が合わせ鏡のようにあると感じています」

池澤「なるほど。マシンの価格も下がり制作環境も整うことで、さまざまな企業が参入できる状況になったわけですね」

清水「昔は助けて下さる人や知恵みたいなものが、今ほどネットワーク上で提供されていなかったので、当社の創業時の人たちは、自分で試行錯誤してノウハウを築いてきました。今でもハードウェアと並んで人間の力は重要ですが、セミナーによる情報開示やオープンソースなどがたくさんありますからね」

池澤「制作する上で、どの分野がいちばんオープンソースに助けられますか?」

清水「プログラムもそうですが、エフェクト系ですね。物理系の演算を取り入れるとリアリティが向上し表現が豊かになりますので、オープンソースや他社さんの事例の公開などに助けられています。プラグインも社内でたくさん作ってきましたが、そういった負担も減りつつありますし、知見を獲得するための方法は、さまざまな企業さんの協力や協業があってこそになりつつあると思います」

池澤「逆に誰もがソフトさえ手に入れ、それなりのハードを手に入れたら、ある程度のものができてしまうということですね」

清水「そうです。そういう環境は便利ではありますが、均一化が非常に進んだために、お金を取る価値をどこに置くかが変わってきているのかもしれません。アセットストアなどに行けば、クオリティの高いものが安く買えるので使用頻度が増える。そうなると、オリジナリティの価値ってなんだろうということになるわけです」

池澤「あれ? これは別のところでも見たぞってなりますよね」

清水「勉強熱心な人が見たら、どこで何を見ても、あれは何かに使われたものだということがわかってしまう。恐ろしい時代です」

池澤「ただ、進化も激しいので技術的なキャッチアップは大変じゃないですか?」

清水「私自身は技術者ではありませんが、難しいと思います。情報をどこから入手するかもそうですし、入手するソースいかんによっては将来予測の読み違いということもあると思います」

池澤「しかも会社全体で読み違いとか」

清水「VRも、少し前に喧伝された3D(立体視)テレビのようになるかもしれないという危惧があるのは事実です。私自身も20年前から実写中心の3D映像を撮っていたのですが、ほかの作品も含めて画面から飛び出すことばかり重要視するんですよ。でも、飛び出して楽しいものって100個もないじゃないですか」

池澤 (笑)

清水「演出的に似てしまうとか、見る側が慣れ過ぎて淘汰される側面もありますが、メガネを掛けてまで立体的に見たいと思わせる価値が作れなかった、習慣になるまでの機会を作れなかったことも大きかったと思います。VRに置き換えても、ヘッドマウントディスプレイを直接肌につけさせるなど、人を動かすことって大変なことだと思うんですね。触覚デバイスなども同じで、触れば楽しいかもしれないけど、そうさせるまでのハードルって高くないですか?」

池澤「高いと思います」

清水「VRの発展や普及を見極めるうえでも、使用する人の心理的ハードルを下げる、言いかえると体験する価値があると思ってもらえるよう、啓蒙を含めて機会を整えることが大事なんだと思います」

池澤「VRにかぎらず3DCGやシミュレータなど、さまざまなコンテンツを制作していると思いますが、それらの開発に重要なマシン選びとはどういった感じなんですか?」

清水「当社はコンテンツの開発だけではなく、シミュレータやVRなどのコンテンツを稼働させるPCや筐体を含めたシステムとしての納品、その後の保守も業務にしています。それらを考慮して、デルの『Dell Precisionワークステーションシリーズ』を導入していますが、デルのマシンを選んだ理由としていくつかあります。まず、機種選定の選択肢が広いということです。さまざまなメーカーの製品を組み合わせていくと、正直いろんな不都合が起こりうるのです。必要としている組み合わせが、キチンと動作保証付きで用意されていることは、すごく重要で助かっています」

池澤「デバイス同士の相性の問題ってよくありますよね」

清水「あと、サポートが迅速で柔軟に対応してくださる点です。これは命綱みたいなものなので、非常に感謝しています」

池澤「サポートの良し悪しは仕事にも直結するので重要ですよね」

清水「ほかには、グラフィックボードの増設など拡張性があることですね。リアルタイムコンテンツはPCの性能に依存するので、かなり重要です。また、24時間レンダリングする制作環境ですから、安定的に稼働する信頼性の高さも選定したポイントです。制作環境だけに限らず、納品先のお客様の業務には24時間管理や監視にかかわるものもありますから、稼働の安定性は何ものにも変えられません。デルが作ってくださるマシンは、当社の信頼性にダイレクトにつながりますから、非常にありがたいと思っています」

キャドセンター社内の制作環境。デルの「Dell Precisionワークステーションシリーズ」が活躍している。

実写と見まごう映像の世界に驚嘆する池澤さん

 今回、制作現場は取材できなかったため、デルのワークステーションが稼働する姿は実際に見られませんでしたが、そんな環境で生み出されたコンテンツの数々を池澤さんに体験していただきました。

 ここからは映像/グラフィックグループの松本さんにご案内していただきました。最初に見せていただいたのが、「4K-3DCG“MIKOSHI”」です。架空の御輿をモチーフとしたフルCGの映像です。4Kのほか8KのHDRに対応しており、その細かさときらびやかさは、大画面で見ていると引き込まれてしまいそうです。

4K映像のMIKOSHIをまじまじと見る池澤さん。

松本「高画質を訴求するテレビのサンプル映像に使っていただいたりしています」

池澤「スゴイ。こわいこわいこわい(笑)。これ一から作るのはめっちゃ大変じゃないですか?」

松本「テクスチャーでやると、つぶつぶの細かさの表現が足りなかったので、1つ1つオブジェクトを置いています」

池澤「この龍の彫り物、木目のとことかスゴイですよね。デザインは誰がしたんですか?」

松本「神輿を作る設計士さんがいて、その方に依頼しました。実は8Kの映像を小さめのディスプレイに表示したところ、印刷物よりきれいに見えました。それを見てしまうと、ほかのものがぼやっと見えてしまいますね」

池澤「え、これでもぼやっとして見えちゃうんですか? めっちゃこわ!(笑)」

制作者のこだわりが装飾の細部に至るまで表現されている。

 池澤さん「こわいこわい」の連発ですが、恐ろしいというよりすごい、感動的という意味合いの表現です。とにかくその映像の細かさ、キレイさに感嘆しつつ、これを作り上げる労力の大変さもわかっている池澤さんならではの褒め言葉です。

 続いて見せていただいたのが、東京23区をフォト・リアルな3D都市データとして整備した『REAL 3DMAP TOKYO』をもとに作っているCG動画です。実写と区別がほとんどつかない映像に、また驚愕する池澤さんです。

REAL 3DMAP TOKYO」の静止画。上空からの視点だと実写との区別がつかないレベル。

池澤「え、これCGなんですか? めっちゃ大変じゃないですか(笑)」

松本「データベースなのでどこからでも見られるのですが、いまは上空からの視点で見ています。朝や昼、夕方といった時間帯も自由に指定できますが、夜に関しては、建物自体の光の設定を開発している最中なので現状は指定できません。いままでは、白箱と言って建物の形状だけのデータを使ってCG動画を制作してきたのですが、『REAL 3DMAP TOKYO』の開発以降は、よりフォト・リアルな表現が可能になりました。都市をリアルに見せるには、建物自体に加えて植栽が大切なんですが、その量もぼう大なんです」

池澤「それは写真を見ながらデータ化しているんですか?」

松本「衛星写真をもとに木の生えている場所をプロットした資料を使って、50人ぐらいの人海戦術なんですが、フォトショップでチクチクと塗りつぶしています。そうやって塗りつぶした場所から木が生成されるシステムを作っています」

池澤「ここには何の木が生えるとか指定しているんですか?」

松本「大まかに言うと、7種類ほどある木の大きさと色をランダムにミックスして生成しています。皇居周辺だけで50万本ぐらい生えています。季節も樹木の色を変えることで秋らしくすることもできます」

池澤「スゴすぎる(笑)」

写真は代々木公園だが、ここも樹木の数は相当なものだ。

松本「建物のガラスには反射も入っていて、映り込みもしっかり反映しています」

池澤「建物のデータはもともとあったんですか?」

松本「MAPCUBEという東京23区と政令指定都市のデータがもともとあって、それをリアルに整備しているので、建物の高さなどは、ほぼ正確です。そのため、このビルから富士山は見られるのかとか、津波が来たときにどういう水の流れになるのかとかといった、シミュレーションにも使えるデータベースになっています」

池澤「それは他社にもサービスとして提供しているのですか?」

松本「もちろんです。たとえばマンションを建てるときは、立地や眺望によって価値が変わりますので、その検証に使用されたりもしますし、太陽の情報も入っていますから、ドラマチックに建物を見せたいという演出的要望にも、日照を再現したいというような場合にも対応できます」

池澤「渋谷とかドラマチックに変わってますけど」

松本「渋谷駅周辺は実際の案件として制作していますし、東京で行われる国際的イベントの招致映像でも当社の3DCGが使われていますから、それぐらいのパワーのあるデータベースですね」

渋谷の街並み。2028年ごろには、もっと高層ビルが立ち並んだ姿へと変貌する。

池澤「これで夜景まで対応できたらスゴイですね」

松本「いま夜景映像がないのは、建物自体からの発光の表現を研究しているためです」

池澤「たしかにそれは面倒そうですね。どうしようとしているんですか?」

松本「実写の夜景空撮データを参考にしながら、新宿の歌舞伎町が光るとか、道路と道路の間だけ光るとか、いろいろと考えています」

池澤「それは、光源を置いていくということですか?」

松本「いまは手で描いていますが、今後データ化することを考えると計算になっていくと思います」

池澤「でも光源を置いていくとなるとレンダリングの時間がものすごくかかりますよね」

松本「レンダラーも進化していて、光源を置いてもそんなに重くならなくなってきているんです」

池澤「そうなんですか!」

松本「まだ課題はありますが、ブラッシュアップして、さらにリアルな都市空間にしていければと思っています」

夕景の風景も、時間設定すれば望んだ姿に仕上がる。

 おそらく、このデータを使った映像は、どこかで一度は目にしているのではないでしょうか。このようなデータは、都市計画にはとても重要で、建物を立てる際に図面を見ただけではわからない周りとの調和や眺望などが視覚的にわかります。実際には撮影が難しい場所での映像も表現できるので、クリエイティブな映像制作にも活用できるでしょう。

東京に巨大な池澤あやかが降り立つ!?

 体験ルームへと移動すると、さまざまなコンテンツが用意されていました。池澤さんが最初に目をつけたのが、ステージ上で歩くと移動できるシステム。おもむろに靴を脱いでステージに乗り、歩きはじめる池澤さん。江戸時代の日本橋を再現した映像の中を歩いていけるもので、短時間での体験でしたが池澤さんは満足そうな笑顔をみせていました。

 ほかにも、実際の海底の状況まで再現した船舶シミュレータもあり、自衛隊や船舶系の学校で採用されているシステムも展示されていました。実際には360度のプロジェクターで覆った中で、海底も見えるという状況になっているとのこと。かなり大規模な本格的なシミュレータだそうです。確かに、こういうシミュレータが途中で止まってしまったら意味がありません。デルの安定性と信頼性の高さは、こういうシステムにも利用されているということで、証明されているとも言えるでしょう。

 次に体験したのが、さきほどのREAL 3DMAP TOKYOのVR版です。今回は特別にグリーンバックを用意していただき、街の中に池澤さんが立っている姿を見せていただきました。

REAL 3DMAP TOKYOの中に現れた池澤さん。

このようにグリーンバックの中に立ってもらい、映像をリアルタイムで合成している。

池澤「ゴジラだ!シン・ゴジラ(笑)」

 と興奮ぎみに、東京の街に現れた巨大な池澤さんは演じていました。

池澤「めっちゃリアル感がある!私この写真欲しいな(笑)。これフェイスブックのアイコンにしたい」

新宿駅西口付近に、正座した池澤さんが降臨。

 VRやゲームなどに対応させるため、リアルタイムで表示できるように極力データを軽くしているとのこと。先ほどのCG映像とは違った新たな使い方が生まれるかもしれません。続いて、VIVEのヘッドマウントディスプレイをつけて、「REAL 3DMAP TOKYO for VR」の世界に没入していただきました。

東京の上空を散歩するように移動する池澤さん。VRならではの体験だ。

池澤「すごい。没入感とゴジラ感が!(笑) 画面で見るよりリアルに見えます」

 VRの活用は、こういった都市の世界だけではありません。プロデュースグループのプロデューサー樋口さんは、

樋口「たとえば、建設前の美術館をVR化して展示物の見えかたを検証したり、実際の展示施設の観光案内コンテンツとして利用したりといった使い方ができます。ある施設では、複数の端末にVR映像を同時配信するシステムを開発し、体験者全員が同じ映像を同じタイミングで見られるようになったことで、施設運営にも貢献しています」

 また、マンションのモデルルームの代わりにも使えるそうです。そんなマンションの映像を見た池澤さんから一言。

このようなスマホを使ったVRゴーグルで、複数の人へ同時配信し、一体感が得られるシステムも開発している。

池澤「あー買いたい!」

樋口「新築マンションは建てる前から販売を開始するので、エントランスや部屋の広さ、インテリアのイメージなどをVRで体感することは、購入を検討される方の想像力を助けます。こういったリアルの購買に繋がるVRツールは今後も発展を続け、その価値は高まっていくと思います」

 池澤さんのおみごとなコメントをいただいたところで、VRの体験は終了です。

 今回は、デルのソリューション自体の体感ではなく、裏方として制作の要になっていて、そこで生まれたコンテンツたちを体験していただいたわけですが感想は?

池澤「CGの世界はスゴいですねぇ。こんなリアルな空撮みたいなCG。木は衛星写真にマークして1本1本生やしているとか、光を灯すにはどうすればいいのか模索しているところとか、どうやって作られているのかを聞けて面白かったです。いろんなところでいろいろトライしながら、細かいけど地道な努力をたくさんして、すごいリアルな世界を作っているんだということがわかりました。また、それを支えているマシンの存在も重要ですよね。レンダリングで24時間稼働しているでしょうから、性能も大切ですが安定性がないと作業が滞る可能性もありますからね。あと、キャドセンターではお仕事だけでなく、それ以外でも技術力を上げたり、感じている物をどう表現していくかということを、社内プロジェクトとしてやっているのもすばらしいですね。会社の就業時間中にやっていいそうなので、とても素敵な企業だと思います」

社内プロジェクトで作られた作品。「日本庭園」は、実際の野菜を撮影して絵の中に配置した、“だまし絵”とのこと。

 社内プロジェクトで作られた映像がエントランスで上映され、廊下のあちこちにも静止画作品が飾られていました。マシンの性能や使用するソフトの環境、それを支える情報や技術がオープンで手に入ることで、昔に比べれば創作する時間は格段に増えてきたのではないでしょうか。そうした時間を生み出し、制作を支えるソリューションは、安定性と拡張性、信頼性のあるものを選ぶことが重要になってくるでしょう。