戸田覚の週刊「ジバラ」-自分働き方改革のススメ【第21回】

「より伝わる文章」を書く方法(1)


「文章がニガテ」なビジネスパーソンは少なくない。しかし、書類づくりはもちろんメールやSNSでのビジネスコミュニケーションにも文章は重要だ。自分で働き方を改革(ジバラ)する第一歩として、よりわかりやすく伝わりやすい文章を書くポイントを押さえておこう。

文/戸田 覚


簡単なメモを作る

企画書や提案書などの書類作りに「あまり自信がない」という人が少なくない。「文章がニガテ」というビジネスパーソンは案外多いのだ。

 こういった書類を作らなくても、文章の重要度はどんどん高まっている。最近は電話よりもメールやSNSでコミュニケーションを取る機会が多く、文章力がないとコミュニケーション下手と思われかねない。

 よりわかりやすく伝わりやすい文章を書くポイントを知りたいだろうが、伝わりやすい文章の書き方だけでも、本が数冊書けるほどのノウハウがある。この連載ではスペースが限られる上に、読者貴兄は「すぐ使えるノウハウが欲しい」と思われているに違いない。ということで、ちょっとしたポイントを2回にわたってお伝えしていこう。

 まず、文章力の有無を考える前の大前提として、自分で伝えたい内容が明確になっていることが重要だ。当たり前だと思うかもしれないが、実は、自分で何を言いたいのかがよくわかっていないために、文章がぐちゃぐちゃになっているケースがよく見受けられる。

 僕は、30年以上物書きを続けているが、それでも原稿を書く前にはメモを作る。短い原稿だとしても、何を書くのかを箇条書きでまとめてから作業するのだ。

 これは、手書きのメモでも何でもかまわない。書く内容を箇条書きにすることで、取捨選択ができるようになる。また、内容が固まると伝える順番も明確になる。

 2000文字程度の文書を書くためのメモなら、作業には5分とかからないだろう。書き始める前のメモがうまく作れないなら、それは「書く準備」ができていないということ。まずは、そこからスタートだ。

まずは書く前に簡単なメモを作る。この作業で頭の中が整理される

伝えたいことを減らす

 たくさんのことを伝えようとすると、実は1つのことさえ伝わりづらくなる。その理由は2つある。まず、書く側のスキルが足りないと、文章の中に色々なことを盛り込もうとして、わけがわからなくなるものだ。

 もうひとつは、読む側の問題。例えば、3つのことが書いてある文章では、後半にさしかかると2つのことが頭に入っている状態になる。そのうえで、3つ目をまた理解して読んでいくのは結構負担だ。我々プロの物書きは、小見出しで区切ったり、1つ1つを納得できるように書くなどのテクニックを使うが、一般的なビジネスパーソンには難しい点もある。

 まずは、できるだけ言いたいことを減らしていこう。メモを作った段階で言うべきことを減らすのがポイント。理想を言えば、1枚の企画書でいいたいことを1つに絞り込む。まあ、それが難しくても3つにするだけで実は説得力は一気に高くなる。「いいところがたくさんある製品だからみんな伝えよう」と考えると、実は何も伝わらなくなるのだ。

言いたいことがたくさんある良い製品。だが、意外に伝わっていない

言いたいことを絞り込んだ方が、実は頭に入るものだ

文章を徹底的に削る

 文章がニガテだと思うなら、長文を書くことをやめてしまおう。文章が短ければ、短いほど、文章力がなくても書けるものだ。仮に悪文だとしても、「短文の悪文」は、「長文の悪文」よりもはるかに読んでいて楽なものだ。

 うまく書けないと思うなら、とりあえず必要なことを全部書いてしまい、その上で文書を削ればよい。意外にムダなことばかりだと気付くはずだ。

 次回は、さらに伝わりやすくなるテクニックを紹介する。

文章を短くすればするほど、伝わりやすくなる

筆者プロフィール:戸田 覚

1963年生まれ。IT・ビジネス書作家として30年以上のキャリアを持ち、「あのヒット商品のナマ企画書が見たい」(ダイヤモンド社)など著作は150冊を超え、IT系、ビジネス系を中心に月間40本以上の連載を抱えている。テレビ・ラジオ出演、講演なども多数行っている。