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2019/07/31

今読むべき本はコレだ! おすすめビジネスブックレビュー - 第13回

2025年、金融業界は壊れてアマゾンが銀行を設立する!?


『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』田中道昭 著

6年後、世界最大の総合オンラインストア「アマゾン(Amazon.com)」が銀行を設立したら――。本書は、そんな大胆な仮説を元に、既存の金融産業を破壊するかもしれない新勢力「金融ディスラプター」の正体と彼らが保持する技術、そして次世代金融産業の条件ともいうべき「金融4.0」の概念を丁寧に解説してくれる。

文/成田全


既存の業界秩序を覆す「金融ディスラプター」

 2019年4月、紙幣デザインの刷新が発表された。2024年度上半期を目処に発行される新一万円札の「顔」に選ばれたのは、近代日本の資本主義の発展に貢献した渋沢栄一だった。渋沢は明治新政府の大蔵省で金融・財政制度の制定に尽力し、後に実業家へと転身。王子製紙や日本郵船、日本鉄道など生涯で約500社の企業の創設や育成に関わった。その渋沢が1873(明治6)年に創設したのが、第一国立銀行(現みずほ銀行)だ。これが日本で最初に開業した銀行であった。

 日本銀行のホームページによると、「銀行」という名称は1872(明治5)年に制定された「国立銀行条例」で、アメリカの「国立銀行法(National Bank Act)」を典拠とした際、この「Bank」をどう訳すか高名な学者によって議論され、「お金(金銀)」を扱う「行(中国で店を意味する言葉)」で「金行」「銀行」の案が有力となり、語呂の良い「銀行」が採用されたことが始まりだ(銀貨が多く使われていたから、渋沢栄一が関わった、など諸説あり)。

 さらに「Bank」は、イタリア語「Banco」に由来する言葉だ。中世(12世紀頃)の北イタリアの両替商たちが、両替をする際にBanco(長机、腰掛)を使ったことが語源と言われている(現在のイタリア語で銀行は「Banca」)。かように長い歴史を持つ銀行だが、近年ではその存在自体を脅かすようなことが起こっているという。その原因は「金融ディスラプター」と呼ばれる新しい勢力の台頭だ。ディスラプターとは「破壊者」を意味し、既存の業界秩序を覆す存在である。

 現在、金融業界ではどんなことが起こっているのか、そしてこの先どんな未来が予測されるのかを解説してくれるのが、企業戦略&マーケティング戦略、ミッション・マネジメント&リーダーシップを専門とする立教大学ビジネススクールの田中道昭教授による『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』だ。「アマゾンが銀行を?」と思うかもしれないが、筆者の田中氏は「アマゾン銀行の設立は時間の問題」と本書に記している。

旧来の金融業界は破壊される

 本書の序章には、もしアマゾン銀行が誕生しているとこういうことが起きるであろう(そして筆者としてこうあってほしいという願いも込めた)2025年のある日の出来事が描かれている。そのすべてはスムーズで無駄がなく、キャッシュレス&ノーストレスであり、自分の強みを活かした働き方や暮らし方ができる世界となっている。そして第1章は「今、旧来の金融業界が破壊され、次世代金融産業が誕生しようとしています」という、なんとも刺激的な書き出しからスタートする。

 多くの人たちから預金を集めて貸出を行い、様々な決済を行う為替などの金融業務を担ってきた銀行業は参入障壁が高いものであった。ところが近年、新しいテクノロジーによって、金融は「擬似的に創造」できるようになっているという。これを本書では「Duplicate(デュプリケート)」と呼び、なぜ銀行免許を取得せずとも金融業務を行えるようになったのかが説明されている。

 次世代金融産業は、まずスマートフォン上で顧客と密接な接点を得られるプラットフォームを構築し、決済機能を進化させた結果、継続的で良好な関係性を築き、旧来の金融業界にはなかった方法で金融業務を拡大させている。もちろん便利で手間がかからないなど、顧客にとってのメリットを追求するのは当たり前のことだ。それが提供できない、不便で使いづらいままの旧態依然とした旧来の金融業界・システムは破壊される……長年金融業界で活躍してきた筆者はそう断言し、なぜこのような状態になっているのかを丁寧に紐解いていく。

本書では「世界一のデジタルバンク」と称されるシンガポールDBS銀行の事例も取り上げている。

世界をリードする、アマゾン、アリババ、テンセント

 本書では次世代金融産業のメインプレイヤーとして、「アマゾン」(アメリカ)、「アリババ」(中国)、「テンセント」(中国)、さらに日本の金融ディスラプターとして「楽天」「LINE」「ヤフー・ソフトバンク連合」「SBI」を取り上げ、驚異の進化を遂げている現状を紹介している。

 また既存の銀行でデジタルトランスフォーメーションを進めている「ゴールドマン・サックス」「JP・モルガン」、日本のメガバンクである「みずほフィナンシャルグループ」「三菱UFJフィナンシャルグループ」「三井住友フィナンシャルグループ」の取り組み、世界一のデジタルバンクである「シンガポールDBS銀行」を例に挙げ、世界で今何が起こっているのかを解説、今後の展開までを見据える。

 銀行業務の出発点であり、長年続いた対面型の「金融1.0」は、インターネットによる変革があった「金融2.0」、スマートフォンが中心となり、フィンテックが発達した「金融3.0」を経て、現在はブロックチェーンを活用したデジタル通貨による決済手段など「新たな社会における、新たな価値や価値観を表象する、新たな金融システム」である「金融4.0」という概念の萌芽があちこちで発生しているのだ。本書は、本来の金融業界があるべき姿を取り戻すにはどうしたらよいのか、日本が取るべき対策にはどんなことがあるのかまで、400ページを超えるボリュームで迫っていく。

 もちろん「ディスラプター」は金融業界だけの問題ではない。この先あらゆる業界で、旧態依然とした組織やシステムはあっという間に駆逐される可能性がある。テクノロジーの進化という激流に飲み込まれず、どう向き合っていくべきか? 本書を読み、すべての働く人たちがじっくりと考えていきたい問題だ。

まだまだあります! 今月おすすめのビジネスブック

次のビジネスモデル、スマートな働き方、まだ見ぬ最新技術、etc... 今月ぜひとも押さえておきたい「おすすめビジネスブック」をスマートワーク総研がピックアップ!

『時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』ジェイク・ナップ、ジョン・ゼラツキー 著、櫻井祐子 訳/ダイヤモンド社

Googleで「最速仕事術」を開発し、GmailからYouTubeまで「究極の効率」をデザインしてきた2人が編み出した、時間を劇的に生む世界一合理的なメソッド! スマホからPCまで、無限に時間を奪い続けるテクノロジーに満ちた世界の中で、時間をつくり、人生にとって本当に大切な意味のあることをする方法。(公式サイトの内容紹介より)

『一人でも部下がいる人のためのほめ方の教科書』中村早岐子 著、西出ひろ子 監修/かんき出版

本書は、部下・後輩指導に悩める上司や先輩の立場に立ち、部下・後輩に必要なことはしっかりと伝えつつ、良好な人間関係を築くための「ほめ方」をご紹介。そして、「ほめ上手な人は叱り上手にもなれるはずです」(本文より)ということで、「叱り方」までカバーしました。基本の考え方から具体的な言い回し実例まで、パッと見てわかりやすい誌面で多数掲載しているので、買ってすぐに役立ちます。(Amazon内容紹介より)

『令和につなぐ 平成の30年』日本経済新聞社 編/日本経済新聞出版社

日本が世界史上で最も輝いたのちに奈落へ落ち、再生への試みを続けた平成の30年間。狂騒からの失墜、長期停滞、自然災害、そして様々な改革の歩みを活写する。取材記録と貴重な証言で綴る同時代史。2017年10月から2019年3月まで日経朝刊毎週土曜日に長期連載されてきた「平成の30年 陶酔のさきに」の書籍化。経済、政治からスポーツ、文化まで、数々のドラマがあり、多様な変遷をとげた平成30年間をふりかえる。執筆者は、日経のベテラン記者たち。写真を交えた年表や図表などのカラービジュアルが特徴。(Amazon内容紹介より)

『《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方』藤村能光 著/扶桑社

本書はサイボウズという「未来のチームのあり方」を模索する会社の中で「自由なのにヒットを生むチーム」を作った藤村氏のノウハウを凝縮した本です。メール中心から、Slackなどチーム内情報共有ツールが多彩になる中で起こる「どのように円滑な情報共有をするか?」という課題を解決するヒントが溢れています。(Amazon内容紹介より)

『MaaS入門:まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』森口将之 著/学芸出版社

日本にもやってきたMaaSブーム。だが日本では自動車業界の新規ビジネスのネタとして紹介されることが多い。本書は、世界と日本の動きをもとに、各種の公共交通の利便性向上で脱マイカー依存を実現し、都市と地方を持続可能にする強力な政策ツールとしてのMaaSの活かし方を徹底解説。交通・ICT・地方創生関係者、必読の1冊。(Amazon内容紹介より)

筆者プロフィール:成田全(ナリタタモツ)

1971年生まれ。大学卒業後、イベント制作、雑誌編集、漫画編集を経てフリー。インタビューや書評を中心に執筆。幅広いジャンルを横断した情報と知識を活かし、これまでに作家や芸能人、会社トップから一般人まで延べ1600人以上を取材。『誰かが私をきらいでも』(及川眠子/KKベストセラーズ)など書籍編集も担当。

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