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チップレット

チップレットは、役割ごとに機能を分割した小さな半導体チップをブロックのように組み合わせて、1パッケージに収める技術のこと。個片化した小さなチップそのものを指す場合もある。

これまでの半導体チップは、チップ上に集積する素子や回路線幅の「微細化」によって性能を高めてきた。回路線幅が微細になれば、チップに集積できる回路の大規模化が可能となり、性能は向上し電力消費も抑えられ、製造コストも低減できた。

ところが近年、微細化の難易度が急激に上がり、性能向上に限界が見えてきた。微細加工技術が高度すぎて、製造中に不良品が高頻度で発生(歩留まりの低下)するようになったのだ。1つの大規模回路では、ごく一部に不具合が生じてもチップ全体が不良品となってしまう。良品が製造できなければ、コストは増大し、ビジネスとして成立しなくなる。

そこで、微細化に代わる新しい高性能化技術として注目されているのが「チップレット」である。不具合のない良品のチップレットだけを選別して、大規模回路を形成できるため、歩留まりの悪化というリスクを回避できる。また、機能回路ごとに最適なプロセスで作ったチップを一緒に使えるメリットもある。例えば、アナログに最適なプロセスで作ったチップと、デジタルに最適なプロセスで作ったチップを組み合わせることが可能になり、多機能化・低コスト化を実現できる。

新たな技術であるチップレットには課題もある。組み立てが複雑なうえ、複数のチップを使用するため、コストがかかってしまう。複数個で構成している分、従来の大規模回路よりサイズが大きくなる。また、チップレットの理想形は半導体メーカーの枠を超えて、最適なチップレットを選定し、自由に半導体パッケージを開発することだ。しかし、現在は各メーカーで独自にチップレットを開発しているため、相互運用性や互換性がない。チップレットの可能性を引き出すには、業界協力が必須といえるだろう。
(青木逸美)