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2018/08/24

今読むべき本はコレだ! おすすめビジネスブックレビュー - 第4回

日本を苦しめる、日本の努力だけでは解決できない問題たち



『[データブック]近未来予測2025』ティム・ジョーンズ&キャロライン・デューイング・著、江口泰子・訳

人口爆発、食糧難、資源枯渇、先端技術がもたらす社会のひずみなど、世界中の人々が危惧する課題の10年先を予測し、解決策を模索するオープン型未来予測プログラム「フューチャー・アジェンダ」。その成果をまとめた本書を読めば、日本の苦境は世界が抱える問題と密接にリンクしていることが理解できるだろう。

文/成田全


“2025年”に起こり得る事態を予測

 アメリカやヨーロッパ各国でプラスチック製ストロー提供禁止の動きが広がっている。これは2015年、絶滅が危惧されるウミガメの鼻の穴からプラスチック製ストローを取り除く動画が公開されたことが支持を広げるきっかけとなったそうだ。毎年1000万トン以上も海に流れ込むと言われるプラスチックごみは自然界で分解されないため、多くの生き物がプラスチック製品を体内へ取り込み、すでに食物連鎖へと入り込み始めているといわれる。日本でも数年前からレジ袋削減の動きがあるが、脱プラスチックは使い捨ての食器やマドラー、綿棒の軸、プラスチックボトルなどにも及んでおり、近い将来、別素材へ代替する可能性も出てきた。

 増え続ける人口、食糧難や水不足、枯渇が危惧される資源、医療の発達などによる高齢・長寿化、テクノロジーの進化によるプライバシー侵害やフェイクニュースの問題、AI等の先端技術が仕事や社会に及ぼす影響、これ以上環境を破壊することのない持続可能な社会の実現――こうした世界が直面する喫緊の課題に関して世界各国で産・官・学の専門家が集まって10年先までを予測、議論を重ね、様々な解決策を模索するのが、グローバルなオープン型未来予測プログラム「フューチャー・アジェンダ」だ。2015年に、2025年までの間に予測される重大な変化についての第2回フューチャー・アジェンダ(第1回は2010年に2020年までの予測が行われた)が実施され、これを1冊の本としてまとめたのが『[データブック]近未来予測2025』だ。

 本書の第1章では、ワークショップが行われた開催国やテーマ、参加者が変わっても繰り返し話題にのぼった、つまり世界中の人々が危惧する、2025年までに予測される重大な変化である「未来に対する12の共通認識」が提示されている。

未来に対する12の共通認識

  1. 人口が爆発的に増加する
  2. 資源が枯渇する
  3. 環境汚染に歯止めがきかなくなる
  4. 移民は悪だ
  5. 仕事が不足する
  6. 女性への教育水準の向上が、多くの問題を解決する
  7. 技術が大きな問題を解決する
  8. 答えは太陽光エネルギーにある
  9. 定年について考え直す必要がある
  10. 医療費は増加の一途をたどる
  11. アジアの世紀が始まる
  12. GDP成長率は、社会の発展を評価する最良の尺度である

 フューチャー・アジェンダでは、これらの問題について議論し、本当に起こる可能性があるのか、また問題の解決策となるのか、もしそうであるなら今の段階でどう対処し、何がより良い選択となり得るのかを探っていく。

未来を予測する、人・場所・覇権・信念・行動・企業という“6つのテーマ”

 第2章から第7章までは、2025年までに予測される問題を6つのテーマに分け、各論が展開される。

 最初は「未来の人」と題し、2025年頃には約100億人に達すると推測されている人口の問題、現在よりさらに進む高齢化と医療費の問題、ミドルクラスが消滅することで加速する格差社会、若者の失業率の増加や男女格差などについて、最善の策は何かを考えていく。

 続く第3章「未来の場所」では現在よりも都市部に人が集まることで起こるインフラの不足、大気汚染や洪水への対処、自動運転などについて、第4章「未来の覇権」では世界の覇権争いがある一方、インターネットによってひとつになっていく世界などを論じ、第5章「未来の信念」では強欲になっていく資本主義と環境の問題、世界が狭くなったことで引き起こされる人と人の間の摩擦、第6章「未来の行動」は資源や食糧問題、デジタルによって変わったルールなど、そして第7章「未来の企業」では企業の淘汰と変わっていく組織や働き方、協働を巡る問題についての考察が重ねられる。

約90%が実現する“予測”を未来へ活かすために

 第8章では「12の共通認識について再考する」として、第1章で提示された問題に対し、第2~7章の内容を元に予測が行われている(多くの人が無知ゆえに抱く懸念や誤解を解いてくれるような内容だ)。さらに第9章では2025年のキーワードとして「信頼」「プライバシー」「格差」「透明性」「アイデンティティ」についての説明が加えられ、結論が導き出される。

 また巻末には「日本語版増補 2025年に向けた未来予測」を掲載、予測が行われた2015年からすでに3年が経過した現在、何が実現したのか、また日本が置かれている、世界でもかなり特殊な現状と今後の問題について簡潔にまとめられている。

 前回のおすすめビジネスブックレビューは「10年後、便利で清潔で安全な日本は崩れ始める――少子高齢化の恐怖を見える化した一冊」という内容だったが、『[データブック]近未来予測2025』を読むと、それは日本国内だけで解決できる問題ではなく、世界の様々な事柄と密接に結びつき、互いに影響し合っていることがおわかりいただけるはずだ。

 フューチャー・アジェンダが第1回で導き出した2020年の予測は、現在までに約90%が実現したと著者は述べている。また本書でまとめられている2025年の予測は、すでに約50%の変化が顕著になりつつあるそうだ。しかし予測が当たったかどうかではなく、大事なのはそれを未来へ活かすために今何ができるのかを考え、行動に移すことだ。本書は国や企業、個人が向かうべき方向性を見出すための強力な手引きとなるだろう。

まだまだあります! 今月おすすめのビジネスブック

次のビジネスモデル、スマートな働き方、まだ見ぬ最新技術、etc... 今月ぜひとも押さえておきたい「おすすめビジネスブック」をスマートワーク総研がピックアップ!

『デス・バイ・アマゾン テクノロジーが変える流通の未来』(城田真琴 著/日本経済新聞出版社)

「デス・バイ・アマゾン(アマゾン恐怖銘柄指数=アマゾンの台頭で窮地に陥るであろう企業の株価を指数化したもの)」という指数の存在に象徴されるように、アマゾンの躍進で大打撃を受ける企業が流通・小売業を中心に増え続けている。しかし、彼らもアマゾンに飲み込まれるのを指をくわえて見ているだけではない。生き残りをかけて、対抗策を講じる企業も次々と現れている。本書は、躍進を続けるアマゾンとそれに抵抗しようとする企業の動向を解説しながら、流通・小売業の将来像を描く。(公式サイトより)

『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下 利益生むホントの働き方改革』(各務晶久 著/朝日新聞出版)

真の働き方改革は単なる時短ではない。じつは営業・事務職場はムダだらけ。上司とのメールのやりとり、エクセルの資料作り……やめるだけで信じられないほど利益が生まれる。大きな投資もAI化も不要、明日からできる目からウロコのオフィス革命の決定版。(公式サイトより)

『[買わせる]の心理学 消費者の心を動かすデザインの技法61』(中村和正 著/エムディエヌコーポレーション)

インターネット上で消費者に購買行動を起こさせるには、どんなサイトにすればよいのか? デザインや文章、キャッチや画像はどのようにしたらよいのか? 購買のための動機づけをどのように考えればよいのか? これらはネットでものを売りたいすべての方にとって、極めて重要な関心事といえます。本書は、「クレショフ効果」や「アフォーダンス理論」「フィッツの法則」「コントラスト効果」「ヴェブレン効果」といった61の心理効果について、「認知心理学」と「マーケティング心理学」の2つの視点から、どのような状況で人の心理が作用するかについて身近なエピソードを交えながら解説していきます。(公式サイトより)

『現役総務さんの声を生かした 総務のお仕事がスイスイはかどる本 第3版』(池田理恵子 著/秀和システム)

中小企業の総務では、「未経験なのに誰も何も教えてくれない!」「前任者の引き継ぎが不十分…」といったことはよくあること。そんな総務の新人さんに、お仕事の全体像とコツをやさしくナビゲートします。本書では、現役総務の先輩×後輩コンビが、現場ならではの感覚で、各種手続きの漏れを防ぐポイントも指摘してくれます。図やイラストもいっぱいだから、読みやすく、はじめの一冊にぴったりです。(Amazon内容紹介より)

『パーパス・マネジメント――社員の幸せを大切にする経営』(丹羽真理 著/クロスメディア・パブリッシング)

働き方改革が叫ばれて久しいが、いったい何が問題なのか?──そろそろ考え直す時期だろう。そもそも企業理念として設定されている概念であるミッションやビジョンは、米国では「古い」とされている。それに代わる概念としてパーパス(目的)が問われている。本書は、いま一番ホットなテーマであるパーパスを日本ではじめて紹介する本だ。本書では、根幹であるパーパスと「幸せ」について新しいコンセプトを提示し、CHO(Chief Happiness Officer)という、会社を変革していく存在についても述べる。(公式サイトより)

筆者プロフィール:成田全(ナリタタモツ)

1971年生まれ。大学卒業後、イベント制作、雑誌編集、漫画編集を経てフリー。インタビューや書評を中心に執筆。文学、漫画、映画、ドラマ、テレビ、芸能、お笑い、事件、自然科学、音楽、美術、地理、歴史、食、酒、社会、雑学など幅広いジャンルを横断した情報と知識を活かし、これまでに作家や芸能人、会社トップから一般人まで延べ1500人以上を取材。

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