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2018/08/08

今読むべき本はコレだ! おすすめビジネスブックレビュー - 第3回

10年後、便利で清潔で安全な日本は崩れ始める――少子高齢化の恐怖を見える化した一冊



『未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること』河合雅司・著

皆が働き、生鮮食品をいつでも買えて、治安が良い――。そんな「当たり前の日常」が10年後には崩れ始めるかもしれない。原因は、少子高齢化。働き方改革の原点ともいえるこの問題がいかに深刻か、具体的かつ身近な例を挙げて示してくれるのが今回紹介する本だ。※画像はイメージです。

文/成田全


企業や個人に起きる「ミクロな問題」について解説

 総務省の統計によると、日本は少子高齢化の進行により、1995年の8716万人をピークに生産年齢人口(15~64歳)が減り続けていて、総人口も2008年の1億2808万人をピークに減少に転じている。少子化には歯止めがかからず、高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)ばかりが上昇していて、人口減少社会はすでに現実のものとなっている。2060年の総人口は2010年の統計に比べ32.3%減の8674万人、生産年齢人口は同じく45.9%減の4418万人にまで減ってしまうと推計されているのだ。

 しかし「減っている」という事実は知っているものの、それが社会でどんな問題となるのか、そして自分にどんな影響が出てくるのかまでは案外と考えが至らないものだ。それを身近な例から提示し、解決策を探るのが『未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること』だ。

 著者の河合雅司氏は、前作『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』で政府や自治体などが取り組むべきマクロの問題について論じたが、『未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること』では、サブタイトルにあるように「あなたに起きること」、つまり企業や個人に起きるであろうミクロの問題について解説している。

人口減少社会で起きる「負のスパイラル」

 本書は2部構成となっていて、第1部は「人口減少カタログ」と題し、「住まい」「家族」「仕事」「暮らし」「女性」という5つのジャンルで、この先起こりうる様々な問題が列記されている。これを読み始めると、今は普通だと感じている日常が急に違って見えてくることだろう(そして暗澹たる気分になる)。

「東京や大阪の繁華街に『幽霊屋敷』が出現する」という項目では、2033年の空き家率は30.4%、空き家数は約2166万戸になるという野村総合研究所の試算が紹介されている。さらには修繕ができない古いマンションも増えていき、外から見ただけではわからない「幽霊屋敷」も出現してしまうというのだ。空き家率が30%を超えた地域は治安が急速に悪化し、スラム化し始めるという説があるそうなので、新しいマンションや戸建て住宅の供給が続く建築現場を目にすると、人が減っていくというのに……と考え込んでしまう。

 働く環境も激変する。経済産業省の資料では、2025年までに経営者が70歳を超える法人の31%、個人事業者の65%が廃業すると仮定、2025年頃までの10年間で650万人の雇用が奪われ、約22兆円のGDPが奪われると予測しているという。黒字で経営が順調な中小企業では後継者不足で廃業するところが出てきて、その取引先である企業にも影響が及ぶ。オフィス内は高齢化し生産性が低下、新たな人材を確保できない会社は人手不足で倒産……そんな未来がすぐそこに迫っているのだ。

 また近年、天候不順が続くと野菜の価格が高騰することが頻繁にある。これは農家の高齢化、農業従事者の減少、政府による稲作保護の推進による人手不足、機械化による大規模農業が難しいこと、新規就農が進まないことなど様々な要因が重なっている。それが現在では天候不順時に現れるが、人口が減っていくと慢性化し、野菜が庶民の手が届かない高級食材になってしまう可能性がある。そして野菜が不足すれば栄養バランスが崩れ、病気の原因となる。病気の人が増えれば医療費がかさみ、労働力は減る。労働力が減れば……と、人口減少社会は様々な要因が重なり合い、負のスパイラルとなるのだ。

総務省「平成28年版 情報通信白書」より。2060年には生産年齢人口が4418万人にまで減少、高齢化率は40%まで上昇すると見込まれている。

自分ができることを今すぐ始めるために

 現在、私たちが享受しているサービスやインフラ、便利さなどが今の状態のまま維持されるには「人が増えていくこと(もしくはこれ以上減らないこと)」が前提になっている。それは大量にものを作って大量に売る、という20世紀の考え方がベースだ。しかし人口が減っていく今、旧世紀のやり方は通じない。21世紀型の思考へ転換しなければならないのだ。

 本書の第2部では「今からあなたにできること」として、人口減少社会を生き抜くためには戦略的に縮むことで豊かさが維持できると指摘されており、そこには個人や会社が今すぐに取り組むべき8つのメニューがまとめられている。その具体的な内容は本書に譲るが、ここからさらに踏み込み、新たな「今できること」を考えるのも必要だ。本書の問題を読み解くことで、日々のニュースに隠れている未来への警鐘に気づくことができるようになるだろう。

 人口減少社会については、スマートワーク総研でもこれまでに「みんなの疑問『なぜ働き方改革が必要なの?』にガツンと答えてくれる」や、夏野剛さんのインタビュー「働き方改革は待ったなし! やらない企業は「滅びの道」です」などで取り上げているので、こちらの記事も本書と併せて読んでもらいたい。ひとりひとりが人口減少社会を自分の問題として考える――解決するには、それが一番の近道なのだ。

まだまだあります! 今月おすすめのビジネスブック

次のビジネスモデル、スマートな働き方、まだ見ぬ最新技術、etc... 今月ぜひとも押さえておきたい「おすすめビジネスブック」をスマートワーク総研がピックアップ!

『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(泉田良輔 著/クロスメディア・パブリッシング)

10年後、あなたの仕事はどうなるのか? 「電機」「自動車」「銀行」の未来を正確に予測してきたアナリストが読み解く、最強の産業・仕事予測。本書は「産業」や「仕事」に関する多くの人が持つ疑問に対して、公開情報やデータに基づいて「いま何が起きているのか」を把握しようというものである。しかし、それだけではない。本書が目指しているのは、現状を理解した上で、テクノロジーによって将来起こりうる「産業」と「仕事」の変化を読み解き、その「未来予想図」を描こうとすることだ。テクノロジーによってこれから起ころうとする変化をより正確に把握するために、「産業」を縦糸、また「仕事」を横糸ととらえ、それらが織りなす布を「未来予想図」に見立て、全体を俯瞰しようとしている。(公式サイトより)

『〔データブック〕近未来予測2025』(ティム・ジョーンズ 著/早川書房)

次の10年を担う産・官・学のリーダー層必読! 未来予測プログラム「フューチャー・アジェンダ」の創設者が、世界39都市で120回にわたり産・官・学の専門家を集めて開催したワークショップの成果を公開! 高齢化、雇用格差、人工知能(AI)の普及、シェアリングエコノミー、「アジアの世紀」の始まり……2025年までに地球規模で起きる重大な変化を完全網羅した、次代を担うリーダー必携の書。ブレグジットなど最新の世界情勢と、日本特有の課題を論じる「日本語版増補」を特別収録。(公式サイトより)

『ジ・エンド・オブ・バンキング 銀行の終わりと金融の未来』(ジョナサン・マクミラン 著/かんき出版)

実はリーマン・ショック後も暴走を続ける金融システムを制御する方法とは!? バンキング(銀行業)の存在しない金融システムは、望ましい形であり、実現も可能だ。以前の社会であれば、バンキングはたしかに円滑な経済活動に欠かせないシステムだった。しかしデジタル革命が起こり、状況は一変する。情報技術の発達によって金融規制がほぼ効力を持たなくなり、もはやバンキングは制御不能の状態だ。2007年から2008年の金融危機は、暴走するバンキングという新しい時代の幕開けを宣言する出来事でもあった。すでに過去のものとなった金融システムを排除すれば、今後は「経済の安定」「生産性」「公正さ」が脅かされることはない。バンキングの終焉は、そのまま新時代の金融システムの幕開けになる!(公式サイトより)

『マルチプル・ワーカー 「複業」の時代:働き方の新たな選択肢』(山田英夫 著/三笠書房)

副業解禁、人手不足経済、人生100年時代、AI(人工知能)……。これからの時代、人と企業はどう変わっていくか――。ロート製薬、ソフトバンク、サイボウズ、エンファクトリーなど副業を解禁した企業事例や、副業を行っている個人の事例から、副業の条件や課題を浮き彫りにする! また、副業の有効性を指示する研究や新しい概念を豊富に紹介。副業を成功させる3つの条件「will×can×environment」/企業にとって副業は「現金流出のない人材確保政策」/副業を解禁しない企業のリスクは?/未来を生き抜く鍵は「多様性と開放性」……etc. 様々な角度から「副業」をとらえた画期的な1冊!(公式サイトより)

『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』(伊神満 著/日経BP社)

一時代を築いた「勝ち組」は、なぜ新世代の競争に出遅れがちなのか? この「イノベーターのジレンマ」に打ち勝つには、何をすべきなのか? 内外の企業が直面するこれらの切実な「問い」に、気鋭の経済学者・伊神満イェール大学准教授は、サバイバルの条件は創造的「自己」破壊にあり、と答える。「共喰い」「抜け駆け」「能力格差」をキーワードに、ゲーム理論、データ分析などを駆使して、「イノベーターのジレンマ」をクリアに解明する。(Amazon内容紹介より)

筆者プロフィール:成田全(ナリタタモツ)

1971年生まれ。大学卒業後、イベント制作、雑誌編集、漫画編集を経てフリー。インタビューや書評を中心に執筆。文学、漫画、映画、ドラマ、テレビ、芸能、お笑い、事件、自然科学、音楽、美術、地理、歴史、食、酒、社会、雑学など幅広いジャンルを横断した情報と知識を活かし、これまでに作家や芸能人、会社トップから一般人まで延べ1500人以上を取材。

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