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2019/12/25

今読むべき本はコレだ! おすすめビジネスブックレビュー - 第15回

人の心を動かすためのしくみはゲームから学ぶべし


『「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ』玉樹真一郎 著

どんなに有用な製品を作っても、多くの人々に認知されない限り、存在しないものと変わらない。だが、そのためには「人の心を動かす体験」が必須だ。本書は、多くの人々を虜にしてきた名作ゲームを例に、「体験をデザインする方法」を教えてくれる。

文/成田全


3つの体験デザイン「直感」「驚き」「物語」

 どんなに優れた製品や面白い作品を作り出したとしても、世の中の多くの人に認知されないと、それは「なかったもの」と同じになってしまう。

 ここ最近の「タピオカミルクティー」のブームもそうだ。以前から存在していた、知る人ぞ知る「タピオカ」という食材があることを多くの人が「認知」したからこそ、「飲んで(食べて)みたい」と人の心を動かし、今では郊外の街への出店があったり、コンビニエンスストアでも売り出されるほどの人気となった。これこそ「人口(じんこう)に膾炙(かいしゃ)する」といえよう。「膾炙」の膾は「なます」、炙は「炙(あぶ)り肉」を表しており、これらは美味しいため多くの人に好まれることから、「広く世の人々に知れわたっていること」(『大辞林』より)という意味になったそうだ。しかしタピオカもなますも炙り肉も、まずは食べてもらわないと始まらない。食べてもらって美味しいと感じてもらえたからこそ次があり、リピーターが生まれるのだ。

 そのためには「人の心を動かす」ことが必須となる。誰かの心を動かすことが出来なければ、すべてのものやことは道端に落ちている石と同じで、誰も気に留めない。ちょっと自分の周りを見回してほしい。あなたの持ち物はほぼすべて「あなたの心が動いたから」手に入れたものではないだろうか? しかし他人の心を動かす術というのは、なかなか簡単にはわからない。この術がわかれば、「人口に膾炙する」ものを生み出せるはずなのだ。

 この「どうやったら人の心を動かす体験をつくりだせるか」を「直感」「驚き」「物語」という3つの体験デザインから解き明かすのが、任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」の開発初期から企画・開発として携わり、現在は独立してコンセプト立案や効果的なプレゼン手法、デザインなどについてのセミナーやコンサルティング等に取り組んでいる玉樹真一郎氏の『「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ』だ。

「コンピュータゲーム」が題材

 本書は全3章+終章と、巻末の2章で構成されている。特徴は「コンピュータゲーム」を題材にしていることだ。

 第1章は「人はなぜ『ついやってしまう』のか」と題し、「世界で最も売れたゲームソフト」として有名な「スーパーマリオブラザーズ」を取り上げている。なぜマリオは画面の右へ進んでいくのか、このゲームでは何をしたら勝ちなのか、どうしてこれほどまでに人々を惹きつけたのかなど、シンプルで簡単なゲームの中に込められた秘密を解き明かし、「仮説→試行→歓喜」という一連の体験を通してプレイヤーに情報を伝える「直感のデザイン」を説明していく。

 「直感のデザイン」は、商品やサービスを伝える際につい陥りがちな「良さ・正しさ」よりも、どう関わったらいいのか直感的に「わかる」ことを優先するのが「ユーザーに寄り添う」ことである、という結論に至る。ここまででも非常に納得できるのだが、実は「直感だけでは弱点がある」のだそうだ。

 そこで、続く第2章は「ドラゴンクエストシリーズ」を題材に「驚きのデザイン」を、そして第3章では「ラストオブアス リマスタード」「風ノ旅ビト」というゲームを例に、直感と驚きを補うための「物語のデザイン」へと話がつながっていく。

 このように、本書は冒頭から順に読み進めていくことで理解が深まっていく作りになっている。また見開きに必ずイラストや図表などが組み込まれているため、「ゲームはやらない」という方にもわかりやすい構成となっている。

巻末まで充実の内容

 そして終章までを読んで「直感・驚き・物語」のデザインの仕組みがわかった後に熟読してもらいたいのが、巻末1「『体験のつくりかた』の使いかた(実践編)」だ。

 ここでは「新しいものが作り出せない」「企画がマンネリ」「アイデアが浮かばない」「会議で誰も発言をしないので長引く」「いつも提案が却下される」「プレゼンで上手に説明できない」「取引先への説明が上手くいかない」「部下が思うように動かない」といった仕事上の悩みの答えを、「考える/企画」「話し合う/ファシリテーション」「伝える/プレゼンテーション」「設計する/プロダクトデザイン」「育てる/マネジメント」という5つの応用編でソリューションを紹介している。ここに至るために本編があった、と言っても過言ではないほどの濃密な内容だ(仕事だけでなく日常生活に役立つ内容もある)。

 また巻末2には、各章での話に即した「体験デザインをより深く学ぶための参考資料」を掲載、資料として挙げられている本の内容まで詳しく説明されているので、より深い考察が可能となっている。そして本書自体が「体験デザイン」を実際に体験できる作りになっているので、各所に散りばめられた仕掛けを見つけながら楽しんでほしい。

 「モノからコトへ」――商品の所有に価値を見出すモノ消費から、感動や体験を重視するコト消費へと大きくシフトしている今、さらに重要性を増す「直感・驚き・物語」の体験デザインについての理解を深めるための一助となるだろう。

まだまだあります! 今月おすすめのビジネスブック

次のビジネスモデル、スマートな働き方、まだ見ぬ最新技術、etc... 今月ぜひとも押さえておきたい「おすすめビジネスブック」をスマートワーク総研がピックアップ!

『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』(宇田川元一 著/NewsPicksパブリッシング)

忖度、対立、抑圧…あらゆる組織の問題において、「わかりあえないこと」は障害ではない。むしろすべての始まりである──。現場で起きる「わかりあえなさ」から始まる諸問題は、ノウハウで一方的に解決できるものではありません。その「適応課題」と呼ばれる複雑で厄介な組織の問題をいかに解くか。それが本書でお伝えする「対話(dialogue)」です。対話とはコミュニケーションの方法ではありません。論破するでもなく、忖度するでもなく、相手の「ナラティヴ(narrative)」に入り込み、新しい関係性を構築すること。それこそが、立場や権限を問わず、新たな次元のリソースを掘り出して、組織を動かす現実的で効果的な方法なのです。(Amazon内容紹介より)

『ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略』(及川卓也 著/日経BP)

AI活用、デジタル・トランスフォーメーション、SaaSをベースにしたサブスクリプションビジネスetc.今、世界中の企業がITを駆使したデジタルシフト(事業のサービス化)を急いでいる。日本企業がこの世界的潮流に取り残されないためには、かつての成功モデルである「製造業的ものづくり」から脱却し、ソフトウェアを中心としたサービス志向の開発体制を構築することが重要だと著者は説く。ソフトウェアがビジネスの中心を担い、インターネットがあらゆるビジネスの基盤となりつつある今、日本企業はどう変化すれば生き残れるのか? 世界的IT企業で働き、現在は製造業をはじめとする日本企業の変革にも携わる著者が書き下ろす、ソフトウェア・ファーストな開発論をぜひ読んでほしい。(公式サイトより)

『中国人が上司になる日』(青樹明子 著/日本経済新聞出版社)

ある日、わが社が中国企業の傘下に――そのとき、どうする? クオリティよりスピード重視、政治を無視すると何もできない、面子を何より重視する、同じ国でも出身地によって全く特徴が違う、携帯の機種で社会的地位を判断……中国のビジネス習慣は日本とはこんなに違う! 中国メディアで約10年勤務経験を持つ著者が、中国企業で働く日本人や中国人ビジネスパーソンに取材を重ね日中のビジネス文化の違いと、その付き合い方について分析する。(Amazon内容紹介より)

『経済がわかる 論点50 2020』(みずほ総合研究所 著/東洋経済新報社)

日本有数のシンクタンク・みずほ総合研究所のエコノミストの選んだ50の論点を読むだけで、2020年の国内外の経済の重要な動きを先読みできる一冊です。50の論点の構成は、「日本経済」「海外経済」「金融・マーケット」「制度・政策」「ビジネス・社会」ごとに10の論点を解説します。「消費税増税を乗り越えられるか」「米中貿易摩擦はどうなるのか?」といった定番の国内外経済の見通しはもちろん、「MMT」「SDGs」などの話題の制度をわかりやすく解説、さらには「東京五輪」「キャッシュレス化」など、読む方の生活に密接した話題について網羅します。読む方に、理解するように努めて読ませるのでなく、コンパクトな解説と図表を駆使して読めば頭に入るようにと、読みやすさを工夫しています。(Amazon内容紹介より)

『2025年、人は「買い物」をしなくなる』(望月智之 著/クロスメディア・パブリッシング)

いまEコマース(EC)の世界で大きな変化として語られる最新の考え方が「デジタルシェルフ」である。SNSでフォローしている人やたまたま道ですれ違った人が持っているものと同じものをその場で注文する。映画やドラマを観ながら、登場人物が着ている服を注文する。冷蔵庫の常備品が切れるタイミングで勝手に商品が送られてくる。スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスが体調の変化を感知し、必要な栄養を含んだ食材を届けてくれる。いままでお店にあった「リアルな棚」が、手のひらのスマートフォンの中にある「デジタルの棚」に置き換えられる。これからはメディアや道行く人、家電など、あらゆるものが「商品棚」になるのだ。今後は、リアル店舗の棚ではなく、この「デジタルシェルフ」をライバルに先駆けて独占することが、多くの企業の命運を握ることになる。(公式サイトより)

筆者プロフィール:成田全(ナリタタモツ)

1971年生まれ。大学卒業後、イベント制作、雑誌編集、漫画編集を経てフリー。インタビューや書評を中心に執筆。幅広いジャンルを横断した情報と知識を活かし、これまでに作家や芸能人、会社トップから一般人まで延べ1600人以上を取材。『誰かが私をきらいでも』(及川眠子/KKベストセラーズ)など書籍編集も担当。

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