ニューノーマル世界のITビジネス戦略を探る #2 圓窓

DIS WORLD Digital Days 2021セミナー報告


2021年2月16日~19日まで、「ニューノーマルで変わるITビジネス。その影響と対策を学び、考える。」をテーマにDIS WORLD Digital Days 2021(主催:ダイワボウ情報システム)が開催された。ニューノーマルでITビジネスはどのように変わるのか? 注目のセッションを紹介する第二回は、初日のセミナーから澤円氏のSpecial Sessionをピックアップする。


自己中のマインドセットを持つことが重要

Special Sessionには「COVID-19時代を生き抜くために必要な『個の力』の磨き方」のタイトルで、長年マイクロソフトのエバンジェリストとして活躍してきた株式会社圓窓の澤円代表取締役が登場した。ビジネスの話をするときにも、COVID-19を抜きにして語れない時代になったが、そんな時代だからこそ、個人の力が大切だと語った。

現代の日本人が1日に触れる情報量は平安時代の一生分、江戸時代の一年分にあたるが、こうした大量の情報を得られるようになったのは、高速移動という手段を得たからだが、COVID-19によって移動ができなくなった。そこで人類に残された道は移動しなくても情報を入手できるデータ通信で、このため、2020年はリモートワーク元年となった。また、オンライン上のマネーは仮想通貨抜きで全体の93%に上るという数字を挙げ、コロナ下、さらに接触回避で電子マネーの普及が進みそうだと予想した。

澤円代表取締役

コロナ下、ビジネスについて「元に戻す」という意識は危険だ。世界はリセットされ、コロナの前と後では別の世界になったと、澤氏は指摘する。世界のリセットが起こったのは25年ぶりで、前回はWindows 95の登場によって始まったインターネット普及元年だった。今後はリセットされたコロナウイルスの存在する世界のビジネスモデルを考える必要がある。

メールやチャットを知った今、FAXと機能を比較する人はいない。同様に、コロナ下で移動ができないことで、働き方に選択肢があることに人々は気づいた。オフィスに行かなくてもリモートワークができる。この選択肢を下支えするデジタル世界を生き抜くためには、マインドセット(物事の総合的な見方)をアップデートする必要がある。固定化されたマインドセットではなく、しなやかなマインドセット(Growth Mindset)を持たないといけない。

全世界が、時間もアイデアも余裕がなくなっている今日ハーバードビジネススクールでは重点をKnowing(知識の蓄積)からDoing(超実践主義)に、そしてBeing(どうありたいか)へと移す中、日本人は完ぺき主義なので変化のスピードを遅らせてしまっている。

日本はマインドセットのアップデートに消極的だが、仕事は我慢してやるものではなく「幸せ」になるためにするものだ。日本人は我慢を美徳と考えがちだが、マインドセット次第で自由になれる。マインドセットのアップデートは無料なのだ。

マインドセットを変えるには「自己中になること」

そのための方法として「自己中」になることだ。仕事は組織のためを考えてやるもので自己中はいけないと考える人もいるだろうが、COVID-19で世界は変わった。会社はどのくらい社員を守ってくれただろう? 出社によって管理をしたいという管理職も多いのではないか。かつては通勤と仕事はイコールだったが、今や通勤はリスクで、なんとなく集まろうというのは危険だ。自己中になることは、イノベーションの原動力になる。

自分のために使う時間を増やすこと

働き方改革も、これまでは「やめること」を決めてこなかった。やることばかり増やしては有限な時間を消費してしまうので、やめることが重要だ。たとえば、ミーティングをしない。リモートでデータがあれば、チャットツールでトピックごとに処理していけばいいのではないだろうか。やめることを増やせば時間は増える。

外資系では時間は貸借するものという意識が強く、60分のミーティングが45分で終われば、「15minutes back to You」とミーティングを締めくくる。もっと自分のために時間を使っていい。ワークライフバランスの意味も、自分のために使う時間を増やすことだ。

「ほうれんそう」の「ほう」は過去の報告で「れん」は現在の連絡だから、BIやチャットなどのツールで代替できる。「そう」の相談だけは未来についてのことだから、ここに時間を使っていきたい。

また、環境も大切だから、「お気に入りのワークスペースを見つける」ことで、パフォーマンスを発揮できる。澤氏自身も市昨年5月に住宅地の雑居ビルに自分専用の事務所を借りた。そこに配信環境を整えていたため、COVID-19の感染拡大下にもスムーズに仕事のスタイルを移行できた。これからは、こうした自分への投資が不可欠で、投資なしに大きなリターンは望めない。

できない理由を探さないことも、マインドセットには大切なことだ。難しい、できない、無理だではなく、どうやればいいかと言い換えよう。そして、アウトプットとして「私はこう思う」をどんどん発信していこうと澤氏は呼びかける。

マインドセットをアップデートしていくために

自分も人も「自己中」であることを認めあい、困ったら人を頼ればいいし、自分のキャリアを二次元で考えずに外の物差しをもってキャリア探しをしていくべきだ。すべての仕事は社会貢献だから素敵なことをしているという自信をもって、今こそ自己中になるチャンスだ。未来は面白いに決まっているのだから、一緒に未来を作っていこうと語った。