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2017/08/04

官民で推進するテレワークの今とこれから~働き方改革パネルディスカッションより

「DISわぁるど in とちぎ 宇都宮」レポートその1

7月24日に実施された「テレワーク・デイ」。労働力不足や残業問題など、企業の様々な課題の解決策として注目されるテレワークを全国で同時に推進するこの施策の直前、「DISわぁるど in とちぎ 宇都宮」において有識者による講演、パネルディスカッションが行われた。

文/陣武雅文


なぜテレワークが必要なのか? 「働く、を変える日」

 少子高齢化や介護による離職など、企業における人材確保が大きな問題となっている現在、国が掲げる働き方改革において推進されるテレワーク。「DISわぁるど in とちぎ 宇都宮」で行われた「企業の存続を左右する!? 働き方改革パネルディスカッション」では、このテレワークについて、総務省の今川拓郎氏による基調講演、複業家の中村龍太氏による講演、そして有識者による熱い議論が展開された。

 総務省 情報通信国際戦略局 情報通信政策課長の今川拓郎氏による基調講演では、日本の労働環境の現状と問題点、テレワークの有効性や導入事例、7月24日に実施されるテレワーク・デイについて語られた。

総務省 情報通信国際戦略局 情報通信政策課長の今川拓郎氏。

 今川氏からはまず、人口の減少や高齢者の増加による生産年齢人口の減少が加速し、さらに親の介護によって約10万人が離職している現状が報告された。今川氏自身も経験したという、突然つきつけられる親の介護という現実、そして将来的に介護を行う可能性がある労働者が半数以上に上るというデータから、今後の労働人口の確保のためにテレワークの推進が急務であることが説明された。

人口の推移と生産年齢人口の減少予測。2060年には生産年齢人口が約50%にまで落ち込み、65歳以上の高齢者比率が約40%にまで増える。

介護・看護による離職が約10万人に達し、将来的に介護をする可能性がある労働者は半数以上に上る。

 テレワークについては、ICTを活用することで、時間や場所にこだわらずに働ける柔軟な働き方であることが語られ、労働人口の確保のほか、離職者を減少させられる効果もあり、働く人にも企業にもメリットがある働き方であることが示された。また、場所にこだわらずに済む分、地方移住の促進など、地方創生についての効果も見込まれるとした。

テレワークを導入するメリットは社会・企業・就業者に幅広く及ぶ。

 しかしながら、まだまだテレワークの制度を導入している企業は少なく、全体の13%ほどしかないという調査結果が示された。さらに、導入済みの企業でもその制度を利用している労働者が5%未満しかいない企業が約半数というのが現状であり、テレワークを導入する企業の拡大と、導入した企業での利用環境の拡大が重要と訴える今川氏。

 テレワークを導入しない理由について「社内コミュニケーションに不安」「対面での業務に支障」「セキュリティが心配」「労務管理が困難」といった事柄を挙げる企業が多いが、それらは専用ツールの活用やすでに導入済み企業の事例を参照することでほとんどの問題が解決することであり、むしろ導入しない言い訳に使われている面もあるとして、意識改革の重要性を説いた。

 また、政府としてもテレワークの推進体制を整えており、毎年11月にはテレワーク月間を官民連携で実施して集中的な周知啓発に取り組んでいることを紹介。さらに総務省の取組として、テレワーク導入推進セミナーの実施、アドバイザーの派遣、テレワークを進める企業の表彰などに加え、地方への人や仕事の流れを促進する「ふるさとテレワーク」の取組をアピールした。

「ふるさとテレワーク」を推進し、働き方改革による地方創生の効果をアピール。

和歌山県白浜町「ふるさとテレワーク」の実例を紹介。実際に生産性が向上していることが報告された。

 来たる7月24日には「テレワーク・デイ」として、全国一斉にテレワークを行う社会実験を実施することも紹介。これは、ロンドン五輪の際、大会期間中のテレワーク導入によって外国人観光客による交通混雑の緩和を図ったという経験から、2020年の東京五輪開会式が行われる7月24日を「テレワーク・デイ」とし、通勤時間帯の交通混雑の緩和やテレワークという働き方改革の定着を目的に国民運動を展開するもので、当日は交通量の変化だけでなく、電気などエネルギーの使われ方の変化など多様な効果測定が行われることも発表された。

「テレワーク・デイ」を国民運動として実施することを解説。

人材不足になることがわかっているのになぜやらないのか?〜「テレワーク導入のコツ」

 基調講演の後に行われたのは、複業家の中村龍太氏(以下龍太氏)による「産業から見た働き方改革、テレワークの導入のコツ」という講演。龍太氏は日本電気、日本マイクロソフトを経て、現在はサイボウズに所属しながらNKアグリやコラボワークにも所属している。

複業家の中村龍太氏。

 龍太氏は、栃木県のテレワーク実施企業が2.1%しかなく、実施予定がない企業が93.2%となっている現状を報告。育児休暇、介護休暇で代替要員確保が難しいという状況の中、人材不足となるのがわかっているのになぜテレワークをやらないのか、と訴える。

 このテレワークが進まない背景については、競争という神話、成長主義の限界、選択と集中の悲劇、標準化・大量生産の迷走、全社一丸となる危険の5点を挙げ、明治以降、工業が躍進し、みんなでやることが効率的であったことが前提となっていると指摘する。日本のピラミッド型の産業構造がその典型で、従っていることが正しいという風潮があるとした。

 テレワークが実施できている会社とできていない会社の違いについては、社長・リーダーが本気で働き方を変えようとしているのかが重要だという。また、社員の幸せを叶える経営者であること、無理難題を求める顧客は切る、またはそうした顧客の意識を変えるという覚悟が持てるかどうかも重要だと語った。

 テレワークの導入について必要なこととして、まず大事なことは働き方の理想を持つこと。そして、実施においては制度、風土、ツールという3つの要素が大切で、それぞれ具体的に確認すべきことが語られた(画像参照)。特にツールでは、ペーパーレスが大事であり、これができない限りテレワークも実現しない。また、テレワーク導入においては、就業規則は変えず、補足説明で補うのが正解だという。

テレワーク導入時に制度として確認すべきこと。

テレワーク導入時にツール関係で確認すべきこと。

「まずやってみる」ことが重要〜有識者によるテレワークパネルディスカッション

 最後に「企業の存続を左右する!? 働き方改革パネルディスカッション」と題し、有識者によるパネルディスカッションが行われた。このパネルディスカッションは、一般社団法人 創生する未来代表理事の伊嶋謙二氏が司会を務め、基調講演を行った総務省の今川氏、講演を行った複業家の龍太氏のほか、一般社団法人 クラウドサービス推進機構および公益財団法人ソフトピアジャパン理事長の松島桂樹氏が登壇。テレワークについて意見が交換された。

伊嶋氏 まずはテレワークを導入する効果について。

松島氏 テレワークができるようになると、オフィスでやるべき仕事がそんなに複雑ではないことがわかります。大事なのは無駄な仕事をなくすこと。オフィスで何をするべきか、打ち合わせしなければならないことはなにかを考えるようになります。「とりあえず人だけ集まっている会議」とか、「顔を突き合わせなければいけない仕事は本当にあるのか?」がわかってきます。

伊嶋氏 そうした状況を踏まえて、テレワークの実現はITありきですか?

今川氏 テレワークについては、社会的なネットワーク基盤がないと始まらないですね。きちんと社会インフラが整備され、そこに企業の情報システムがしっかりと乗る。その後、さらにそのシステムをどう利用していくかという順番です。日本のインフラは世界最先端レベルですが、使いこなせているかという面ではまだまだ後進国です。

パネルディスカッションの様子。

龍太氏 実はインフラという点ではすでに揃っているから、テレワーク導入について時間はかからないのです。にもかかわらず導入しないのは、『今のような街や仕事が消えてしまうかもしれない』という危機感がない地方が多いなとは思っています。

伊嶋氏 テレワークを使いこなせるかは、指導する人の有無が重要なポイントのような気がするのですが。

龍太氏 指導する人はいますし、インフラも揃っています。その状態でできないのはやる気の問題です。できないという人は、どんな課題があるのか、どうするのかを真剣に考えていない思考停止状態なだけです。

松島氏 メールやSNS、チャットなどは、個人としては9割以上の方々が利用していると思うのですが、会社として活用するかについてはハードルがある。そのハードルを超えるのは企業の問題であって、「こう使えば効率的になる!」という気づきが重要です。

伊嶋氏 導入検討となるとセキュリティについて気にする企業は多いですよね。

テレワーク時のセキュリティを危惧する企業は多いと伊嶋氏。

思考停止せず、テレワーク導入に際しての課題などを考えていくべきと龍太氏。

今川氏 クラウドやシンクライアント、指紋認証等の技術を適用すれば、テレワーク環境でのセキュリティは十分確保できます。情報漏洩等のリスクが100%ないとは言えませんが、実際に漏洩する原因は持ち出し等のヒューマンな要素が多く、クラウド技術等で専門家が一括管理する方がむしろ安全です。銀行などセキュリティの厳格な業界でもテレワーク導入が相次いでいて、先進事例を参照すれば安心して導入できると思います。

伊嶋氏 そのあたりをどうやって伝えたらテレワークを普及させられるでしょうか。

龍太氏 テレワークなどで働いている人を地域で紹介しあうとか、30代前後の新しいことをやろうという人とたくさん対話する、どんな仕事をしているかを見ることでしょうか。それをこなしつつ『自社ならどうすればいいか?』を考えることですね。

今川氏 キーワードは「まずやってみる」です。テレワークは体験してみないとわからないので、みんなで一斉にやってみるというのが、今後の定着に向けた大切なポイントです。クールビズが成功したのはみんなで一斉に始めたからです。だから「テレワーク・デイ」もみんなで一斉にやるのが鍵だと思っています。

今川氏曰く「テレワークは、みんなで一斉に『まずやってみる』ことが大事」。

松島氏 まず、タダのものは活用しましょう。SNSを業務で使っていいかどうかということはありますが、タダのものを使って、痛い目にあったら有料を使ってみるという形で、まずは勉強する必要があります。いまの仕事のほとんどはテレワークでできるので。

今川氏 実は栃木県からは、ICTプロジェクトの提案があまり多くないように感じています。先にご紹介した白浜町でも、サテライトオフィスの設置に始まり、プログラミング教育の講習会や進出企業間のビジネス連携などに波及しています。栃木県でも、自治体をからめたプロジェクトをまず作ってもらえれば、関連するICTのプロジェクトの展開が次々に生まれてくると思います。ぜひ自治体を巻き込んで、「ふるさとテレワーク」などのプロジェクトを始めてみていただきたいですね。

松島氏は「まず無料サービスで試行錯誤してみては」と提案。

「テレワークしない言い訳」を考える時間は終わった

 ディスカッションでは、“テレワーク導入の前提条件は整っており、あとは企業・自治体のやる気次第”という意見が目立つように感じた。

 確かにテレワーク導入の大前提となるインフラは万全、ペーパーレス化とルール作りについても参考となる導入事例や指針が多数存在する。そして今回のDISわぁるど会場を見渡してもわかる通り、関連ソリューションも豊富だ。こうなると、やはり最後は企業・自治体の危機感に掛かっていると言える。テレワークは労働人口減少に対する切り札として、いつかは導入せざるを得ないものだ。人口流出とのダブルパンチに見舞われかねない地方こそ、一刻も早く導入すべきだろう。

筆者プロフィール:陣武雅文

元デザイナーながら、MS-DOS時代からパソコン書籍編集者を務める。インターネット黎明期からコンピュータネットワークにおけるコミュニティに興味を持ち、制作した書籍もネット関連やグループウェア関連が多い。現在は働き方改革と最新テクノロジーの関わり方に注目している。

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